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クリアウォーターOSAKA株式会社

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-暗黙から形式へ-
‶知〟と‶技〟の可視化を導く
         ナレッジセンター

 大阪市下水道事業から継承され、技術・ノウハウをさらなる強みとして発展していくことを目的として設置されたナレッジセンター――。総勢8人の少数精鋭で構成されるこのチームは、クリアウォーターOSAKA(CWO)の経営基盤を骨太にしていく重要なパーツを担う。

 「ヒト・モノ・カネ」は単なる経営資源ではなく、企業の存続、発展のための「命脈」だ。中でも「ヒト」は単なる労働力ではなく、企業価値創造の中核を担う資本として最上位に位置付けられる。大阪市下水道130年史で築き上げられてきた知識、スキル、創造性、情熱を原動力に組織を成長させていくために欠かせない存在、それがナレッジセンターなのである。


組織の資産を体系化

 ナレッジセンターは2021年10月に経営企画部内に設置された。経営企画部は、同社の司令塔として位置付けられ、「経営企画課」「ナレッジセンター」「DX推進課」「ウォーターPPP企画室」の4ユニットで構成。下水道事業を取り巻く課題が複雑化する中、経営戦略の立案から技術継承、官民連携まで幅広い役割を担う。技術だけでなく経営の視点まで全体を俯瞰し、最適な資源配分や仕組みづくりを進めていく、まさに同社の方向性を示す羅針盤だ。

 同社では、老朽化施設の改築更新や人材不足への対応が大きな課題となっており、中でも暗黙知的な要素が大きかった技術の属人化を防ぐための仕組みづくりが求められていた。そこでナレッジセンターでは、技術情報の集約や業務標準化、教育・研修基盤、DXとの連携、技術継承を担う専門機関として、設計資料、維持管理データ、トラブル事例などを横断的に集約。大阪市下水道事業が蓄積してきたデータを整理し、暗黙知から形式知への転換を目指している。

 一方で、技術継承や若手技術者の育成、業務標準化に活用していくため、経営企画部内のDX推進課と連携してデジタル化を進めるなど、下水道事業で得られる膨大な知識を〝組織の資産〟として体系化し、若手育成や業務品質向上につなげている。

 この少数精鋭のチーム、単に情報を集めて整理する機関ではない。チーム全員の共通認識として、これらの情報を経験や事例を含む付加価値の高い経営資源に発展させることを常に意識している。

 ナレッジセンターは本社機能に位置付けられた、いわゆる背広組のイメージが強く見えがちだが、問題が起きれば現場に駆け付け、エンジニアとひざ詰めでコミュニケーションを図り、「対応策をどう可視化するか」「事前予防として必要な要素は何か」など現場と一緒に議論する。彼らは常に‶何かあったらすぐに動く〟ことを意識して執務をしている。最前線の現場に従事しているエンジニアらしい堂々した佇まいだ。

ナレッジセンターニュースリリース

経営基盤の強化に資する

 130年で培った技術と経験・ノウハウといった暗黙知を形式知化することは並大抵のことではない。現場のベテラン社員は、音やにおい、温度など五感を働かせて機器の状態を見極める。まさに職人領域だ。これを形式知化していくことは非常に難しいのだが、同センターのスタッフは果敢に挑む。

 ベテラン社員のインタビューを行いながら、設備機器の運転操作や管路管理作業の模様を撮影。さらに若手エンジニアに映像を見ながら作業に携わってもらい、「詳細説明がほしいところは」「どういった点がわかりにくかったか」など活用側の声を反映。さらに作業時に注目すべきポイントやコツについても字幕を挿入したり、映像を拡大したりするなど、単なる作業時の説明動画でなく、後に続く若手エンジニアも理解しやすいよう構成にも工夫を凝らす。これら映像ツールは、集水ますの土砂清掃や小型高圧洗浄車の運転操作など維持管理に必要な技術映像集として多数ラインアップされ、生きた教材として技術継承と技能向上に大きな効果を発揮している。

 映像制作に携わるナレッジセンターの梅川弘治担当係長は「処理場ごとに設置されている設備は異なりますので、運転管理の仕方も千差万別です。一つひとつ映像化していくことは大変な作業ですが、技術継承は下水道事業を持続していく上で大きな課題です。これらを解消していくために現場としっかりコミュニケーションを取りながら後世にわたって活用しやすい映像ツールを構築していきたい」と前向きだ。

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  • 機械基礎研修
  • 電気基礎研修
  • 研修カリキュラム(一部抜粋)

 同社における社員教育や研修についてもナレッジセンターが担う。社員の大多数は大阪市建設局からの転籍社員であるが、今後、熟練した技能を有したベテラン社員が定年退職を迎えていくことが見込まれているため、さまざまな研修カリキュラムを駆使して人材育成に注力している。

 具体的には新入社員研修から始まり、経験年数、職種、階層などキャリアに応じたカリキュラムを整え、それぞれの社員が求めるキャリアプランに整合した研修計画を策定。必須研修と希望型研修を区分し、社員の技能向上とキャリアアップをサポートしている。

 「ナレッジセンターのスタッフは、現場社員と常に綿密なコミュニケーションを図り、どういった内容が求められているか、常にアンテナを高くニーズ収集に努めている」とナレッジセンター兼DX推進課の荻野剛盛担当係長は語る。技術はもちろん、安全衛生やマネジメント、コンプライアンス、維持管理など多種多様の専門講座がラインアップ。加えて、下水道技術検定および下水道管理技術認定試験、さらには技術士といった資格取得に向けた講座など実に80講座を開設している。

 また、大阪市内全12下水処理場と市内8ブロックで区分した管路管理センターに全てに、電子ホワイトボード・大型ディスプレイ・Web会議システムを一体化したMAXHUBを導入。Web会議の定着はもとより、現場での研修受講も可能としている。

映像を活用した技術継承

若手も活躍

 同センターのスタッフは大阪市から転籍した現場経験豊かなベテラン社員だけではない。CWO発足後に採用された若きプロパーも在籍。書類様式の統一やExcel VBAを用いて定型作業の自動化を図るなど業務の標準化と効率化に向けて日々活躍している。

 同センター兼DX推進課の杉上陸さんを中心に、事業部施設課の岸本僚真さんや事業部工事監理課の原田翔太さんら各事務所に配属されている若手スタッフがタスクフォース的に集い、現場起点による意見を集約し、改善に努める。若手スタッフが「自分事」として積極的に取り組む光景からは、良好な企業文化が着実に育まれていることがよくわかる。

 彼らの取組みと意欲は管路系業務統合システムの構築にもつながっている。同システムでは、管路業務の標準化と効率化に向け、各事務所でばらつきのある様式や独自ルールを統一することで将来的な事務所の集約を見据えた土台の強化を図る。これにより工事図面や許可情報、関連書類を一元管理し、書類の転記作業のゼロ化を目指している。

 また、月・年単位で工事依頼量をリアルタイムで集計し目論見管理の精度の向上を図り、許可期限の延長竣工漏れ等のミスを未然に防止していく。さらに蓄積データを活用し、社員ごとの業務量を正確に把握し、業務量の最適化を図るなど若手の発案から生まれた新たな経営資源による成果にも期待が高まる。


「ヒト」に注力する幅広い活動

 ナレッジセンターの役割はこれだけに尽きない。

 同社は、大阪市の包括委託業務の要求水準を確実に履行する一環としてISO55001を認証取得。ISO55001は、下水道、道路、橋梁、鉄道およびその他のエネルギー、通信などの社会インフラ分野で、資金、人材、情報などのマネジメントを含めて計画的かつ効率的な施設管理を行うことにより、初期機能の継続的な発揮とともに最大の資産価値を生み出すために必要事項をまとめたアセットマネジメントの国際規格だ。アセットマネジメントの改善、効率化、高度化が図られ、第三者説明能力の強化、インフラの包括委託管理を請け負う事業やPFI事業への参画の有利性、インフラ等の海外輸出の促進が期待されている。

 このシステムの継続運用にナレッジセンターが尽力。2022年の認証取得以降、12セクション8センターの全所属で自主的な内部監査を実施するとともに、毎年、全社員を対象に理解度向上研修を実施し、社員への浸透・意識付けを図っている。

 ナレッジセンターの活動は、ISO継続運用に向けた意識付けをはじめ、技術継承に向けたナレッジデータベースの構築、キャリアプランに整合した研修制度など、経営資源の最上位に位置付ける「ヒト」づくりに注力するものだ。企業の持続性に資する重要なミッションに対し、同センターの現場最前線を指揮する鮫島剛副センター長は「現場で得られた知見を組織の資産として蓄積し、誰もがアクセスできる形にすることで、業務の質を高めていく仕組みをしっかりつくり上げたい。技術の属人化を防ぎ、知識を次世代へ確実に引き継ぐことがわれわれの使命」と語る。

 インフラの老朽化進行や人材不足が社会問題となる中、ナレッジセンターの取組みは同社の経営基盤強化を導くだけでなく、下水道事業の持続に悩む多くの地方公共団体の一助となるだろう。


記者の視点

 ナレッジセンターに焦点を当てた。「ヒト・モノ・カネ」は企業経営に必要な三大経営資源をまとめた表現だが、近年では「情報」が加わり「ヒト・モノ・カネ・情報」と呼ぶことが多くなっている。「情報」が企業経営において重要視されている証拠だ。ナレッジセンターの取組みはまさに「ヒトづくり」と「情報の集約・活用」が大きな柱であり、事業活動の持続に向けた「経営基盤強化」を地で行くセクションだ。このような専門セクションを組織化する企業は多くない。人口減少社会における下水道事業の持続化を展望した先導的な取組みだ。

 執行体制は豊富な現場経験を積んできたエンジニアやCWO発足後に入社したプロパーなど多様な人材で構成されている。培った経験も歩んだ時代も異なるこの老若チームの共通言語は〝現場に寄り添う〟。この共通言語こそが彼らの活動指針となっている。CWOが発足してから今年で10年を迎える。130年築き上げた大阪市下水道のノウハウを集約したナレッジデータベースの構築や社員のキャリアアップ、業務の標準化・効率化など、下水道事業の持続可能な未来を先導する「ヒトと情報」の取組みに注目していきたい。

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