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クリアウォーターOSAKA株式会社

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地域に寄り添い持続可能を支援する

~CWOが進める大阪市域外業務~

施工管理支援で自治体の負担を軽減

 クリアウォーターOSAKA(CWO)は、大阪市が直営で管理していた下水道事業に対して民間と行政の役割分担を明確化した上下分離方式によって、行政ノウハウと株式会社としての民間原理を融合した下水道のプロフェッショナル集団。大阪市内全域の下水道施設の運転・維持管理が主力事業だが、発足時から取り組んでいる大阪市域外業務(他都市・海外)の獲得と国内外への貢献は、経営理念、経営方針、基本戦略に掲げられ、大阪市包括委託業務と並んで基幹業務に位置付けられている。

 大阪市域外業務を担う事業戦略部は、日本の上下水道事業をけん引してきた水コンサルタントの経営に長く携わった碇智執行役員兼事業戦略部長を筆頭に、大阪市をはじめとする自治体経験者、機械・電気エンジニアリング、コンサルタントといった民間企業出身者など、経験豊かで多様な人材で構成される総勢40人の実務集団。ウォーターPPPのプレイヤーや民間企業と連携した包括的民間委託業務などを行う技術第一課と、日本下水道事業団(JS)や自治体などへの行政支援、ウォーターPPPのアドバイザリーなどを行う技術第二課とで構成されている。

 発足直後から、「勝山市勝山浄化センター包括民間委託支援業務」(福井県)や「河内長野市下水道施設包括管理業務委託」のほか、JSとの業務として、「管路ストックマネジメント計画アドバイザリー業務」「土木設計課における積算審査に係わる役務提供業務委託」「包括的民間委託施設機能確認業務に係る役務提供業務委託」「包括的民間委託契約履行監視業務に係る役務提供業務委託」などを手掛けていた。

 大阪市域外業務の事業規模は約6億円で、今のところ売上全体の3%程度であるが、事業戦略部を先導する碇執行役員は、「官民両面からのアプローチと、大阪市で鍛えられてきた業務改善を意識したマネジメントによって、ありがたいことに自治体からの信頼を獲得してきている。市域外業務は当社の成長分野の一つとして、数年の間には創業時以来の目標である売上10億円を目指していきたい」と期待を込める。

 各地から寄せられている信頼の厚さには、地方公共団体の代行・支援機関であるJSも注目している。地方公共団体の代行事業に万全を尽くすためJSが発注している施工管理のサポート業務について、CWOは多数の業務を受託している。現場経験豊かなCWOのノウハウを駆使して、建設工事の指揮・監督を担い、計画に沿って工事が進むように現場を管理するほか、施工計画の立案や各種書類の作成、原価・予算の管理など工事に関わる事務処理までJSの業務をトータル的にサポート。これら一連の業務に対し、大阪市下水道で100年以上かけて培ってきたCWOのノウハウを惜しみなく使い、今や東は愛知県、西は鹿児島県まで全国各地で事業を手掛けている。

 こうしたJSのサポート業務を通じて、従来から持ち合わせていた行政的視点と民間手法に加え、維持管理情報を踏まえた上で優先度を的確に見極める設計・施工管理のサポートに磨きがかかり、自治体から直接、これらの支援を依頼されるケースも増えている。実際にCWOのサポート業務は自治体間で徐々に話題となり、現在では八幡市(京都府)や徳島市などの業務も請け負っている。


自治体特有の事情に精通

 大阪平野の南東部、大阪府と奈良県との府県境に位置する柏原市では、施設の老朽化や使用料収入の減少、増加する業務量に対する技術職員の不足といった人・モノ・カネの問題を抱える一方で、マンホール蓋のがたつき、宅内ますの詰まりといった住民対応業務が増えるなど、職員の負担が増大していた。

柏原市都市みどり安全部下水工務課・野宮正浩主査

 そこで、これまで個別に単年度契約で発注していた下水道管路施設の各種業務を複数年で一括発注することで効率化と職員の負担軽減を図ることを決め、ポンプ場を除く下水道管路施設約246kmを対象に、巡視点検や調査、清掃、住民対応など日常的な維持管理業務をパッケージ化した包括的民間委託を試行することとなった(第1期事業期間=2023年7月~2025年6月)。

 この結果、CWOを代表企業とするJV(構成企業=管清工業大阪支店、大紀、辻儀組、オリジナル設計大阪事務所)がこれを受託。また、2025年7月1日からの第2期業務も「柏原市下水道パートナーズ」の名を冠した同JVが受託し、CWOはJVの統括として、工事関係報告書の取りまとめや市への提出、道路占用申請などの事務手続き、包括業務のセルフモニタリング等を請け負っている。

 同市都市みどり安全部下水工務課の野宮正浩主査は、「現場対応の負担が大幅に軽減され、業務効率化を図ることができた。休日・夜間を含む通報の窓口は市が担当するものの、現場状況の確認以降はJVが担当し、その内容を市が確認した上で、JVに修繕工事等に当たってもらっている。緊急を要する場合を除いて、住民対応も含めてワンストップでJVに対応してもらうことで、職員の負担がかなり軽減された」と評価する。

 さらに、「大雨の時に溢れやすい水路にWebカメラを設置し、常時監視を行うことを提案してもらった。1期目では市内2カ所に試行的にカメラを設置したが、スクリーンにごみが引っかかる場合には、JVに水路の清掃等に向かってもらうなど判断基準を整理することができ、溢水の未然防止に大きな効果があった」という。まさに自治体特有の事情に精通しているCWOならではの視点が生かされている事例である。


プレイヤーとアドバイザーの2本柱で

 CWOでは施工管理業務だけでなく、政府主導で進められているウォーターPPPに対しても積極的な支援を展開している。

 ウォーターPPPは、上下水道分野における新たな官民連携手法として長期契約で管理と更新を一体的にマネジメントする方式。職員不足や施設の老朽化、料金・使用料収入の減少といった地方公共団体の課題に対して、上下水道分野の持続性を向上させるための有効な手段として期待されている。

 CWOはこのウォーターPPPにプレイヤーとして参画する一方で、アドバイザーとしてウォーターPPPの導入・運営を検討している自治体を支援するという2本柱で事業を展開している。

 特に大阪市をはじめ、堺市や河内長野市など五つの地域では、専門企業と協力・連携し、統括管理業務やセルフモニタリング、コンストラクションマネジメントなどを実施。中でも統括管理や事業評価、セルフモニタリングについては、官民双方のノウハウを有するCWOの強みが高く評価されている。

 大阪府の北部に位置する茨木市では、政府が進めるウォーターPPP導入の可能性を探るため、令和6年度に基礎調査業務を発注し、CWOが落札した。同市建設部下水道施設課職員は、「CWOは、最新の国の動向や必要な情報を収集把握し、分析していると感じた」と話す。

 また、ほかの職員は「行政経験を持つ方が多いと聞いていたため、正直なところ、われわれのノウハウとそれほど差はないのではないかと考えていた。しかし、実際に打ち合わせを重ねる中で、持っている情報量の多さに驚かされた。これだけの知見や技術力、積み重ねられたノウハウがあれば、今後発生し得る課題や複雑な局面にも的確に対応してもらえるだろうという安心感を持った」という。

 加えて、「行政経験豊富な人材が多く、自治体の立場や実情を十分に考慮した技術提案やアドバイスをできることがCWOの強みであると感じる。このような行政的観点も持ち合わせた上で、説明・協議等を行うことができるため、業務の進捗もスムーズであった。このCWOの強みは、ウォーターPPPのような市の大きな事業の方針決定に関わる業務で生きる独自のものであると思う。今年度も引き続きウォーターPPPの導入に向けた検討を進めていく予定なので、CWOが落札者となった際は、この強みを発揮して、事業がより良いものとなるよう活躍してもらえれば」と期待を込める。


行政生まれだからこそ理解し合える境地

 市域外業務への期待は高まるばかりだが、事業戦略部は地方の下水道事業をどう見ているのか――。

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  • 碇執行役員
  • 森山課長
  • 大谷課長

 碇執行役員は「地方の中小自治体は資金不足、人材不足、老朽化の進行といったさまざまな課題を抱えており、事業を持続できなくなるのではないかという危機感を抱いている」と警鐘を鳴らす。

 技術第一課の森山課長は「何か対応しなければならないことは分かっていても、人・モノ・カネのリソースが圧倒的に足りていない。DXで効率化を進めても行政責任が増すばかりで実行するための体制が脆弱化しているのは否めない」、技術第二課の大谷課長は「ウォーターPPPなど新しい政策が国から打ち出されて、何をどう進めたらよいか、入口から理解に苦しんでいる」と自治体の本音を代弁する。

 さらに森山課長は、「下水道の機能が停止すると地域は大混乱に陥り、都市活動が麻痺する。これは埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を見ても明らか。だからこそ官民のノウハウが融合する当社が自治体に寄り添って、地域の持続に貢献していくことが大きな使命」と市域外業務への思いを熱く語る。

 現在は施工管理、包括的民間委託、ウォーターPPPを中心とした事業を進めているが、行政から生まれた企業だからこそ、自治体と本音で理解し合える視点は大きな経営資源だ。CWOはこれからもこの貴重な経営資源を生かし、自治体の悩みに応えていくことで、地域の暮らしを守る下水道トータルカンパニーとして進化していくだろう。


記者の視点

 事業戦略部への取材を通して、株式会社ゆえの経営の効率性や合理性を求めすぎることもなく、また手を抜くという選択が全くと言っていいほど見受けられない、その実直さを実感した。むしろ同部の幹部からは、「地域のためにどう貢献していくべきか」という下水道事業に携わる矜持を感じ取ることができた。彼らの根底にあるのは、下水道インフラの持続が危ぶまれているという強い危機感だ。

 国民生活に不可欠なインフラであるにもかかわらず、地方自治体では、人・モノ・カネといった経営資源が不足しており、中でも担い手不足は最も顕著である。目の前の業務に追われ、激甚化する自然災害への備えや社会環境の変化への対応といった事業の持続可能に向けた取組みまでは手が届ききらないのが実態だ。

 将来を見通せば、人・モノ・カネといった経営資源が潤沢になっていくということは考えにくい。だからこそ、多様な人材と卓越した技術力を有する官民融合企業としての役割は大きい。人口減少社会において、CWOのスキルが地域の持続に必要とされることだけは疑う余地はなく、困窮しつつある多くの自治体を少しずつでもサポートしてほしいと願うばかりである。

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Fresh&Historical

「下水道の未来を支える」それが私たちの使命です

~下水道トータルソリューション企業として、国内外の下水道事業への貢献をめざす~

 

クリアウォーターOSAKAは大阪市100%出資により2016年に設立し、大阪市下水道事業100年超の伝統あるDNAを継承しています

当社の強みである、大阪市下水道事業で培われた「下水道行政の知識・経験」「技術・ノウハウ」をもとに

●下水道経営上の課題抽出と対策提案や事業化支援

●下水道事業の発注者支援や運営支援

といったトータルマネジメントを行い、事業企画及び運営の技術・ノウハウを自治体内で継承できるようサポートします

 

CWOだからできること

【快適な都市生活の確保】

下水道の維持管理を通じて、みなさまの快適な都市生活を守ります

【国内外の下水道への貢献】

これまで培った経験や技術を国内外の下水道に役立てます

【下水道人の育成】

私たちの技(わざ)を受け継ぐ、下水道人を育てます

【新たなチャレンジ】

既存の枠組みや、これまでの実績にとらわれず新たな挑戦を続けます

【下水道の「未来」の先取り】

下水道使用料収入の減少、施設の老朽化など下水道の将来を見据えて、未来の下水道を支えます

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