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クリアウォーターOSAKA株式会社

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MADE IN OSAKAの技術力                                                                 現代社会の持続に

~デジタルとアナログを融合した新時代の職人集団~

メンテンナンス職人として

 2016年7月、大阪市の市政改革の一環である大阪市下水道事業の経営形態の見直しに伴い、上下分離方式による市100%出資の外郭団体として設立したクリアウォーターOSAKA(CWO)。下水道施設の設計・施工・運転・維持管理をはじめ、市町村へのコンサルティングや計画策定、技術支援など下水道分野のあらゆる業種に精通した専門家が集う、わが国を代表する下水道トータルマネジメント企業だ。

 社員総数は1000人近くに及び、執行体制は総務部、内部統制・危機管理室、経営企画部、事業戦略部、事業部の4部1室制を敷く。中でも事業部は、下水道施設の運転維持管理・ユーティリティ調達、施設の評価診断・設計・監督、さらには市民からの要請への対応など、まさに下水道サービスの最前線を担う組織で、全社員の8割が所属する大所帯。その多くが大阪市からの転籍組で、大阪市下水道が持つ130年の歴史を継承してきたプロフェッショナル集団である。

 晴れの日も雨の日も、市内の隅々まで張り巡らせている5000kmにも及ぶパイプラインや大阪市内から出る1日190万tにも及ぶ汚水を浄化する下水処理場の機能保持に励む姿を見れば、彼らなくしては安全で快適な市民の日常が成り立たないことが見てとれる。人々が手に取って匠の技を実感するようなものづくりの職人ではない。決して華やかな世界ではない、都市の基盤を下支えする下水道インフラのメンテナンスを生業とする職人だ。

 彼らの存在は、大阪市民の生活に極めて重要な役割を持つ。トラブル発生時の迅速な対応はもちろんのこと、定期的な保守作業によって設備の長寿命化を図り、不測の事態を未然に防ぐ。予防保全によるダウンタイムの軽減は、経済的利益だけでなく、下水道事業への信頼向上にもつながっている。


下水道の仕事に誇りを持って

 安定している地方公務員からの転籍にはかなりの決断を強いられたはずだが、迷いはなかったのだろうか。

平野管路管理センター長・島田英明さん

 平野管路管理センター長の島田英明さんや東部土木施設管理課の池田健太郎さん、十三管路管理センターの太田裕士さんら、この道30年以上のベテランエンジニアたちは「確かに考えましたよ。でもこの仕事は社会に絶対に必要。先輩方から継承してきた誇りがありますし、やっぱり好きなのかなあ」と謙虚に言葉を紡ぐ。

 最前線の現場に向かう作業服を身にまとった彼らの一言一句からは、「下水道の仕事に対するプライド」が醸し出されている。

東部土木施設管理課・池田健太郎さん

 しかしその一方で、「われわれは大阪市民のために、大阪市内で仕事してきました。だから皆さんから技術的に評価されても、本当の技術レベルがどの程度なのかわからない」との声も…。それもそうだろう。大阪市で磨いてきた技術は大阪市民のために活用されてきたのだから。

 これに対して、大阪市時代から新潟中越地震や東日本大震災など数々の災害現場で復旧支援に携わってきた経験を持つ島田さんは、「後輩たちが不安に思うのも当然でしょう。でも多くの災害現場で復旧支援を行ってきた経験から言えば、私たちが磨いてきた技術・ノウハウは、どの地域でも通用する自信があります」と胸を張る。

 「災害現場で管路が機能しているかどうかを調べるためには、TVカメラ調査が一般的ですが、私たちは色付けした水を上流部から流します。その水が下流部まで届いていれば、最低限の管路機能が確保されていると判断します。原始的かもしれませんが、これにより迅速な判断が可能となります。実は能登半島地震での被害調査でもこの手法を用いました。これらは大阪市の管内調査で当たり前のように行っている手法なのです」と語る。

十三管路管理センター・太田裕士さん

 CWOは、大阪市より「大阪市域外での災害時における応援復旧対策の協力に関する協定」に基づく要請を受け、市と協力体制で2024年1月1日に発生した能登半島地震における災害支援を展開した。

 CWOが発足してから初めての災害支援ということもあったが、市内東西南北のエリアに配置している管路系事務所単位で支援隊を整備。巡視・点検の高いスキルを持つ経験豊富なエキスパートをリーダーに、CWO設立後に新たに採用した若手を融合した自走化組織を編成し、延べ214人のエンジニアを派遣した。


自信深めた技術力

 被災地では、大阪市と京都市などが担当する石川県能登町と穴水町を対象に、被害調査や管路機能の確保に注力。彼らの持つ技術力は被災地でいかんなく発揮され、当初予定されていなかった輪島市門前処理区まで支援エリアを広げた。管路機能の本質を見分ける彼らの眼力は、早期復旧への歩みを進める大きな力となった。

 今回、初めて災害現場を経験した十三管路管理センターの太田さんは「能登地域の災害現場に行くまでは不安がありました。ただ、私たちが普段当たり前のように行ってきた業務は、安全確保、状況判断、予見能力、時間配分、修復作業、どれをとっても他の支援隊に劣っていないと感じ、磨き続けていた技術力が十分すぎるほど通用することがわかりました」と自信を深めた様子だった。

施設課・池田隼翔さん

 多くの若きエンジニアも能登地域の災害現場に派遣されている。施設課に所属する池田隼翔さんもその一人。2023年4月に入社した2年目の若手だ。

「極寒の中での復旧作業は簡単なものでありません。災害支援となると早期復旧に注力しなければなりませんが、先輩方は交通状況や足場の確保などまず安全確保を経てようやく作業に取り掛かります。厳しい作業環境にあっても決して慌てることなく、一つひとつ丁寧に、そして淡々と被害調査を行っていました。これが実に冷静で早い。職人芸ともいえる仕事っぷりでした。私も早くあのようになりたいと思いました」と新しい息吹は着実に育まれてきている。

 CWOにおける巡視・点検業務は必ずチームで行う。メンテナンス分野において、最も重要なのは高度な技術力だけではない。人間力、つまりコミュニケーション能力も必要な要素だ。チームの中には親と子ほど年齢が離れているケースも多い。しかし、施設に異常が発生した際、市民の不安を解消し、信頼を築いていくことにベテランも若手も関係ない。

 「私たちの若い頃は先輩から一言一句事細かく指導されてきたわけではありません。背中を見て技術の習得に努めてきました。指導される時は厳しかったですよ。私たちが修繕できたと思った集水ますも数センチ誤差があるだけで何度も何度もやり直しをさせられました。ただ先輩方は必ずできるまで、何も言わずじっと待っていてくれました。今の時代、こういった指導はできませんけどね」と話す東部土木施設管理課の池田さん。いつの時代も技術をつなげていくというマインドはぶれていない。時代の変化に対応してきたからこそ歴史が積み上がってきたのだ。


時代の変化にも謙虚に真摯に

 今や人口減少・高齢化が進行し、DX(デジタルトランスフォーメーション)化は不可避となっている。

 同社においても下水道DXセンターを設置。AIによるビッグデータの収集・解析・活用、CPS/IoTによる作業管理の能率アップと精緻化を通じて、労働生産性とリスクマネジメントを向上させ、高水準での品質・安全・コスト管理、洗練された労働環境の創出を図るなどソリューション提供と業務領域・業務範囲の拡大を進めている。

施設課・葉山真吾さん

 現場社員の反応は柔軟だ。

 施設課の葉山真吾さんは「着実にDX化は進んでいますし、必要であることは理解しています。この分野は熟練世代よりも若手世代の方が詳しいので、われわれが教えてもらうことが多い。一方で、私たちが磨いてきた技術を若い世代に伝えていきたいのですが、職人感覚を中心とした暗黙知的な要素が強く、なかなか形式知化しづらい。だからこそコミュニケーションを大切しているのです」とDX化が求められる現代社会だからこそ、世代を超えた対話の重要性を説く。そして進化する技術に対応し続ける貪欲さも垣間見えた。

 高度なスキルを持つメンテナンス職人は、新しい技術や情報を現場に柔軟に取り入れ、生産性の向上にも貢献することが期待される。IoTやAIの活用による診断機能の進化などメンテナンス分野にも高度な技術の導入が期待されている。職人はこだわりを持って物事に取り組む一方で、柔軟性や協調性に欠けるとも言われる中、同社の職人たちは、若手とのコミュニケーションを積極的に図るとともに、デジタル化への探求心と柔軟性を兼ね備えた、まさにデジタルとアナログを融合した「新時代の職人」と言える。

 能登地震の災害現場において、早期の被害状況把握と情報共有を図るため、デジタル化した被災状況チェックシートが各支援隊に配布され、データをタブレットに入力することで作業スピードが格段に上がったのだが、この取組みは同社からの提案だという。「われわれ〝ジジイ〟の提案なのですよ」と教えてくれた島田さん。市民に寄り添い、若きエンジニアの成長を誰よりも望み、そして技術の進化を止めない―彼らのような新時代の職人集団だからこそ、今の社会が守られているのではないだろうか。


記者の視点

 「自分の技術・ノウハウが大阪市以外で通用するのか不安であった」という言葉からもわかる通り、この道30年のプロであっても、決して驕ることなく、下水道インフラの仕事に真摯に向き合う姿勢が印象的だった。全国1500の自治体が下水道事業を実施している中で、大都市の技術力は一般的に高いと言われるが、定量的な評価基準があるわけではない。彼らの日常は大阪による大阪のための技術であった。

 大阪市下水道は、130年の歴史を積み重ねているがゆえに、他都市と比較しても施設の老朽化が進行している。施設更新の必要性は理解されても巨額な費用が障壁となるため、できるだけ長寿命化を図っていく必要があり、CWOの社員はその延命策に技量を注ぐ。しかし、図らずとも能登半島地震における支援を通して、自分たちの技術力が確かなものであることを確認できた。「普及」から「持続」へ転換が求められる日本の下水道に「MADE IN OSAKA」の技術が必要とされることが証明された瞬間だ。

 地道な巡視点検もDX化も若手エンジニアとのコミュニケーションも積極的に取り組む姿勢は、実に味わい深く、高い人間力を感じる。日本を代表する下水道トータルマネジメント企業への道は彼らの存在なくして考えられない。

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Profile

Fresh&Historical

「下水道の未来を支える」それが私たちの使命です

~下水道トータルソリューション企業として、国内外の下水道事業への貢献をめざす~

 

クリアウォーターOSAKAは大阪市100%出資により2016年に設立し、大阪市下水道事業100年超の伝統あるDNAを継承しています

当社の強みである、大阪市下水道事業で培われた「下水道行政の知識・経験」「技術・ノウハウ」をもとに

●下水道経営上の課題抽出と対策提案や事業化支援

●下水道事業の発注者支援や運営支援

といったトータルマネジメントを行い、事業企画及び運営の技術・ノウハウを自治体内で継承できるようサポートします

 

CWOだからできること

【快適な都市生活の確保】

下水道の維持管理を通じて、みなさまの快適な都市生活を守ります

【国内外の下水道への貢献】

これまで培った経験や技術を国内外の下水道に役立てます

【下水道人の育成】

私たちの技(わざ)を受け継ぐ、下水道人を育てます

【新たなチャレンジ】

既存の枠組みや、これまでの実績にとらわれず新たな挑戦を続けます

【下水道の「未来」の先取り】

下水道使用料収入の減少、施設の老朽化など下水道の将来を見据えて、未来の下水道を支えます

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