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クリアウォーターOSAKA株式会社

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現場視点の業務効率化

DX導入による人口減少時代の下水道マネジメント

「現場の声」を起点に

 少子高齢化の進行により労働人口の減少が避けられない中、社会インフラを維持していくためにはDXの推進が不可欠となっている。上下水道分野においても水需要の減少に伴う収入減や職員数の減少、施設の老朽化など複合的な課題に直面しており、業務の効率化は喫緊の課題だ。こうした状況を背景に、地方公共団体、民間企業のいずれにおいてもDXを活用した課題解決の動きが広がっている。

 クリアウォーターOSAKA(CWO)は2016年7月、大阪市の市政改革の一環として実施された上下分離方式による大阪市下水道事業の経営形態見直しに伴い、市が100%出資する外郭団体として設立された。大阪市内の下水道施設の運転・維持管理を主力事業とするほか、市域外の市町村に対する技術支援や計画策定なども手がける下水道のトータルマネジメント企業だ。

 CWOは2022年4月にDX推進課を発足。「スピーディーに変革し続ける組織へ」をDXの本質と捉え、カメラによる遠方監視やIoT化によるデータの蓄積・可視化など業務効率化に向けた取組みを進めてきた。DXを通じた組織の変革にはボトムアップ型の取組みが不可欠と位置付け、現場の声を起点に技術の提案へとつなげている。

 現場の声を重視する背景には、DX導入そのものが目的化してしまう「技術起点」の導入を避ける考えがある。下水道の維持管理と一口に言っても処理場ごとに設備や条件は異なり、他所の事例を真似ても必ずしも成果につながるとは限らない。さらに、導入後の運用を十分に考慮しなければ、技術が有効活用されずに形骸化してしまう可能性もある。

森田主幹

 こうした問題意識から、現場の声を軸としたボトムアップ型の課題解決を行う方針とし、2022年10月に処理場の運転・維持管理を担う現場社員へのヒアリングを実施した。

 DX推進課・森田信也主幹は「当初は、何のためにDXを導入するのかを明確にすることが難しかった。スモールスタートにはなるが、現場の声を起点に一つひとつ着実に解決していくしかない、との認識でまとまっていった」と発足当初を振り返る。


情報共有の迅速化と省人化

市岡下水処理場

 市岡下水処理場では、2024年6月に水質自動観測局のIoT化を実施した。IoT装置を自作し、観測した水質データをクラウドへと自動送信するシステムを構築。可視化ソフトを用いて監視室や各自のスマートフォンで水質の状況を確認できるようになった。

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  • スマートフォンでも確認できる
  • モニターで測定値を確認
  • 自作したIoT装置
  • 水質自動観測局

 従来は水質悪化の兆候が見られた場合、現場社員が観測局まで出向いて測定値を確認し、水質担当社員に連絡していたが、場所を問わずリアルタイムでの確認が可能となり業務効率が大きく向上した。

 水質管理を統括している事業部水質課・有薗理沙主任は「これまでは観測局で測定値を確認するしかなかったが、手元のスマートフォンでリアルタイムの数値を見ながら水質を確認できる点は大きなメリット」と評価する。

 また、同課では、市内各所の水質データを集約しており、これまでは各事務所の水質係長への問い合わせや日報データの受け取りが必要だったが、観測局のIoT化によりこれらの手間が不要になった。

壬生水質係長(左)と有薗主任

 さらに、従来はExcelで管理していた水質データの入力作業も不要となった。過去データの傾向から概算で把握していた水質の変化傾向についても、予測値を入力することで将来予測が自動算出されるシステムを導入している。

 同課の壬生美晴水質係長は「誰が見ても水質を把握できるのは大きな強み。将来予測が容易になったことで放流量の調整など運転管理の効率化につながっている」と話す。


異変をいち早く察知

 千島下水処理場では、2024年8月から雨水ポンプの遠方監視を開始。点検業務の負担軽減、故障頻度の高い設備を常時監視したいという現場からの要望を受けて実施することとなった。同下水処理場の雨水ポンプ5号機では、不具合により漏水が確認されたことから緊急対応として常時監視用のカメラを設置。建物間に長距離無線を配置することで監視室から遠隔での状態監視を実現した。

寺田場長(左)と徳田副場長兼運転保全係長

 夜間には3人体制で運転・維持管理に当たっており、降雨時には雨水ポンプに1~2人を追加配置していたが、カメラの設置により追加配置は不要となり、オペレーターの精神的負担の軽減にもつながっているという。

 徳田勲副場長兼運転保全係長は「不具合のある設備があると、どうしてもそちらに気を取られてしまう。常時監視が可能になったことで安心感が生まれた」と語る。寺田直之場長も「夜勤に増員する場合は、日勤の社員が勤務することになる。そうすると日勤に欠員ができて労働力不足につながりかねない。遠方監視は、省力化と監視強化を両立できる点でとても助かっている」と高く評価する。

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  • 5号ポンプに設置されたカメラ
  • カメラ(左上)で水位を確認
  • モニターで常時監視が可能に
  • 建物間には長距離無線を配置
  • 自作のIoT装置
  • 反応槽3室目にDO計を設置

 また、2025年8月からは、溶存酸素計(DO計)の測定値を常時監視している。監視室の監視モニター上で約30日分のデータを可視化し、数値の変動傾向を確認することができる。従来、反応槽の4室目で測定を行っていたところ、前室の3室目に常時監視ができるDO計を設置することで早期の異常検知が可能になった。

 同下水処理場は、繁華街のある中央区の排水が流入する津守下水処理場からの送水を処理しているため、雨天時に水質のバランスが崩れやすい特性を持つ。また、コロナ禍以降には流入する水質の不安定化が続き、これまで必要なかった薬品投入の機会が増えているという。

 こうした状況の中、寺田場長は「水質管理の精度向上が求められる中、常時監視によって異変の早期発見につながる」と期待を寄せる。


点検業務の負担軽減

梶田設備管理係長(左)と松浦主任

 住之江下水処理場では、2025年9月から汚泥処理棟の機械濃縮機、濃縮槽の引抜ポンプ圧力計、ポンプ棟屋上の高架水槽、急速ろ過池の排流きょの4カ所を監視室の一つのモニターで確認できるようにした。機械濃縮機では、内部にカメラを設置しリアルタイムで汚泥の状態を確認できる。汚泥の粘度などを画面で把握し、凝集剤投入量の調整などに活用している。

 引抜ポンプは、圧力が一定以上になると停止してしまうため常に注意を払う必要がある。同下水処理場の松浦祐樹主任は「導入前は、その都度確認しに行くしかなかったが、監視室で圧力の上昇・下降傾向まで把握できるようになった」と効果を語る。

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  • カメラで汚泥の状態を確認
  • 一つの画面で4カ所を監視
  • 引抜ポンプの圧力を常時監視
  • 機械濃縮機に設置されたカメラ
  • 高架水槽を捉えるカメラ
  • 排流きょ(手前)をカメラで監視

 高架水槽については、万が一漏水が生じた際の迅速な対応に向け、設備状態の常時監視を可能とした。排流きょについても、一定の高さから流れ込む施設の構造上、泡が発生する可能性があるため、カメラによる常時監視を行っている。

 これらの設備監視は、DX推進課による業務効率化に関するヒアリングの中で現場から要望した4点全てが実現したものだ。梶田明生設備管理係長は「日々の点検時に確認していた箇所を常時監視できる点はありがたい。特に引抜ポンプの圧力が安定しないときには夜間であっても頻繁に現場確認していたので、省人化の面でも助かっている」と話す。


蓄積したデータを有効活用

 これらの技術の多くは、システムの構築から装置の製作までDX推進課の檀野修一システム担当係長が手作りで行ってきた。しかし、もともとこの手の作業が得意だったわけではないという。

檀野システム担当係長

 檀野係長は「ポンプ場の運転・維持管理を担当した現場での経験が大きい。日々の業務を少しでも楽にしたいという気持ちはよくわかるので、一から勉強した」と語り、現場感覚を大切にしている様子がうかがえる。

 DX推進課は、発足からこの4年間でさまざまな業務効率化に資する技術の導入を進めてきた。一つの現場に新たなシステムが導入されると、それを見た他の現場から同様の技術を希望する声が増えており、DXの効果が着実に浸透してきている。今後は、日々寄せられる現場からの要望に応える技術提案を行うとともに、課内の技術継承・人材育成に注力していく方針だ。

川井氏

 同課に配属された入社1年目の川井新大氏は「主に業務の補助を担当しているが、今はまだわからないことも多い。日々の業務を通して学びながら少しでも早く力になれたら」と意気込みを語る。

さらに、これまでの大阪市包括委託業務などで蓄積してきた情報をデータとして集約し、運転管理業務の高度化を図り新たな価値の創出に向け有効活用を進めていき、データの活用方法についても現場の声を起点に、より効果的な手法を探っていく考えだ。

 DXの推進による業務効率化を必要としているのは大阪市だけではなく、多くの自治体に共通する課題である。CWOが積み上げてきたデータの集積と、それを有効活用するシステムが確立されれば、人口減少時代の下水道マネジメントのモデルケースとして、他の自治体にとっても有効な手立てになるのではないかと期待している。


記者の視点

 「現場の声」というフレーズが繰り返し語られていたことが印象的だった。DXの導入そのものを目的とするのではなく、現場が本当に必要としているものを見極め、提供していく視点は、この先DX化が進んでいく中でも忘れてはならない。

 また、抱える課題は立場や業務内容によって異なり、全てを一度に解決してしまう万能な手段は存在しない。森田主幹が話すように「スモールスタート」で「一つひとつ着実に解決していくしかない」のだろう。

 業務効率化を望むのは大阪市に限った話ではない。CWOがこれまで積み上げてきた高度な技術や蓄積された情報が他都市にとっても有効なデータとして活用されていくことを期待している。そして、業務効率化によって生まれた時間を余暇に充てるなど、働きやすく魅力的な上下水道界が築かれていくことを願う。

 遠方監視の技術が今後さらに発展していけば、場所にとらわれない多様な働き方が広がっていくだろう。それは人手不足の解消に寄与するだけでなく、障害や難病など、さまざまな事情で外出が困難な人々にとっても働くことの選択肢が広がるきっかけになるのではないだろうか。

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「下水道の未来を支える」それが私たちの使命です

~下水道トータルソリューション企業として、国内外の下水道事業への貢献をめざす~

 

クリアウォーターOSAKAは大阪市100%出資により2016年に設立し、大阪市下水道事業100年超の伝統あるDNAを継承しています

当社の強みである、大阪市下水道事業で培われた「下水道行政の知識・経験」「技術・ノウハウ」をもとに

●下水道経営上の課題抽出と対策提案や事業化支援

●下水道事業の発注者支援や運営支援

といったトータルマネジメントを行い、事業企画及び運営の技術・ノウハウを自治体内で継承できるようサポートします

 

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下水道の維持管理を通じて、みなさまの快適な都市生活を守ります

【国内外の下水道への貢献】

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【下水道人の育成】

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【新たなチャレンジ】

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