「ガラス切り」から着想された独自技術
地震大国 日本において、社会インフラを守る技術は日々進化を遂げている。巨大なエネルギーに対し、構造物をどう守り抜くか。一般的には、構造そのものの強度を高めて地震動に「抗う(耐震)」、揺れを「吸収する(制震)」、建物と地盤を切り離して揺れを「抑える(免震)」といったアプローチが取られることが一般的とされてきた。
しかし、下水道管路の更生・補修分野でトップランナーとして知られる東亜グラウト工業が開発した「マグマロック工法」がたどり着いた答えは、既存のどのカテゴリーにも当てはまらない。「力を操る」という、極めて斬新な発想であった。
この技術の根幹を成すアイデアは、開発者の意外な体験から着想を得ており、次のように語っている。「子どもの頃に見た、板ガラス屋の仕事がヒントになった。職人はダイヤモンドカッターでガラスに一本の筋を入れる。たったそれだけで、ガラスは驚くほど簡単かつ綺麗に切断できる。当時の印象的な記憶を思い出し、その原理を生かせないかと試したのが始まりだった」。
地震発生時、地盤の液状化現象に伴ってマンホールが浮上したり、地盤の歪みで下水道管路全体に上下のたるみが生じたりする。マンホールと下水道管の接続部(管口)には、その結果、構造物の挙動の違いによる強烈な「せん断力」が作用するため、無防備な状態の管路は破断してしまう事例が多く報告されてきた。
そこで開発陣は、「あえて弱点部位を作っておく」という、構造物を頑丈にする一般的な定義とは正反対の発想を取り入れた。これは、ダイヤモンドカッターの筋のように切込みを意図的に入れることで、力が集中する箇所をあらかじめ設定する。そして、巨大なエネルギーが加わった際にその切込み部分が動く(破損をコントロールする)ことで、致命的となる管路全体の破壊を防ぐのである。
「New Guide Joint(誘導目地)」の頭文字をとった「NGJ」というこの機構は、「あえて弱点を作り、地震動の力を操る」という、柔軟かつ逆転の発想から生まれた独自技術である。








