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東亜グラウト工業株式会社

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管内洗浄が導く 水インフラの持続

水道クライシスに立ち向かうアイスピグ

 汚れたパイプラインを経済的かつ迅速、安全に延命化する。それも「水と塩」のみで。

 固体と液体という水の状態変化を操り、流動性と剪断力、相反する特性を兼ね備えた管内洗浄技術、その革命児が『アイスピグ』である。長年にわたり本事業に携わってきたエンジニアに、管内洗浄技術の革新性、AI技術との融合が導く新たな行政支援ソリューションの展望、今後のビジネス展開について話を聞いた。

 (インタビュー対象=管路グループアイスピグ事業部 豊嶋達也氏)


管路メンテナンスの「原点」

 都市域の隅々まで張り巡らされ、人体でいう動脈機能に例えられる「水道」、同じく静脈機能に当たる「下水道」。市民生活の基盤として構築された重要インフラも、高度経済成長期の集中整備から半世紀近くを経た今、管路の適切な維持管理・延命化が中核を担う時代へと移行している。

 一般的には、水道も下水道も、管路の老朽化や耐震性といった外的な状態に目を向けられることが多い。しかし管内においても、経年とともに堆積物が固着するなど維持管理上のトラブルは避けられない。

 そこで、これまで「補修」「更新」「耐震化」の分野を開拓してきた管路メンテナンスのスペシャリスト、東亜グラウト工業が、約15年前に新たな一手として示したのは、原点回帰とも言える「管内洗浄」だった。

アイスピグ管内洗浄のイメージ【出展:アイスピグ研究会】

 管内の汚れが引き起こす問題は、上下水道で異なる形となって現れる。下水道管において、有機物の堆積を放置すると、断面収縮による流量低下が生じ、また腐食の原因となる硫化水素などの有害ガスを生成する温床ともなる。一方、水道管では、鉄バクテリアやマンガンの堆積、シールコートの剥離による濁水発生などが懸念される。

 現場の実情について、豊嶋氏は次のように語る。「『水道水』というサービスをエンドユーザーに供給していることが、下水道と大きく異なる点だ。下水道管(圧送管)の流量低下が発生した場合、確かに対応すべき優先事項の一つだが、すぐには表面化しづらい。これに対し、水道管が抱えているのは、濁水や水質低下、漏水といった課題だ。特に濁水の対応は、住民から事業体へ直接苦情の連絡が入り、緊急の対応が求められる。ある自治体では毎日のように問い合わせがあり、そのたびに水道職員が奔走し、他の業務に手を付けられない状況にあると聞く」。

 こうした経年汚れに起因する水道管路のトラブルに対し、最も根本的な対策として考えられるのは更新(取替)だ。しかしそこには、やはり予算(カネ)の高い壁が立ちはだかる。


「延命化」へのパラダイムシフト

 水道事業を取り巻く経営環境は厳しい。全国の水道管路総延長約77.3万kmに対し、年間更新率に換算すると、わずか0.6%(約160年サイクル)にとどまっているのが実情だ。

 この「人・モノ・カネ」の窮状を背景に、これまでの「更新偏重」の事業展開はいよいよ限界を迎えている。そこで、規模を問わず多くの事業体で現実味を帯びているのが、既存ストックをできる限り長く使う「延命化」という選択肢だ。管路更新に代わる延命化の手段として『管内洗浄』に脚光が集まりつつある。

 「数年前までは、実害がない場合には興味を持ってもらえなかった事業体様からも、『予防保全の観点から詳しく話を聞きたい』と引き合いをいただく機会が確実に増えている」と語り、同氏はアイスピグが求められる前向きなパラダイムシフトを肌で感じている様子だった。


固液ハイブリッド技術

 管内洗浄には、水流で押し流すウォーターフラッシング、球体または砲弾形状の専用器具を挿入し、水圧で管内に進入させることで汚れを押し出すピグ工法、その他にも気体や洗浄機器を使用するさまざまな工法がある。

施工方法【出展:アイスピグ研究会】

 しかし、これらの既存技術で全ての現場に対応できるわけではない。管内に堆積する汚れや異物の性状は多岐にわたるからだ。

 洗浄力が高すぎると管路が損傷したり、異物が曲管・伏越し部などでピグ詰まり(閉塞)が生じたりするケースもある。逆に流動性(通過性)を重視してしまうと、管内の汚れや異物を除去する能力が落ちてしまう。つまり、洗浄力と流動性はトレードオフの関係にあるのだ。

 こうした課題を解消したのがアイスピグである。特殊なアイスシャーベットをピグとして活用することで、固体の削り取る力と液体の柔軟に流れる力を互いに打ち消し合うことなくハイブリッド化することに成功した。他とは一線を画す技術として注目を集めてきた。


全国500件の実績

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  • 【出展:アイスピグ研究会】
  • 【出展:アイスピグ研究会】
  • 【出展:アイスピグ研究会】
  • 【出展:アイスピグ研究会】
  • 【出展:アイスピグ研究会】

 英国発の技術であるアイスピグ管内洗浄工法は、2010年に東亜グラウト工業が国内専用実施権を取得し、2012年に研究会組織を発足したのを皮切りに、全国で地域組織(アイスピグ地域協会)が設立された。今年7月時点で、関東、中部、北海道、東北、中国四国、九州で各地域協会主導の下、普及活動が進められている。

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  • 製氷装置(デリバリーユニット)
  • 夜間施工(下水道)
  • シールコート片除去にも威力発揮(水道)
  • 管内堆積物除去に威力(下水道)

 導入初期は、下水道を中心に実績を上げてきたが、近年は水道分野での需要が一気に拡大している。このほかにも、民間工場や農業用水などでも着実に導入が進み、今年3月時点では、44都道府県で累計500件(洗浄距離272.9km)に達した。2019年には、国内の社会資本のメンテナンスに係る優れた取組や技術開発を表する、第3回「インフラメンテナンス大賞」で優秀賞に輝いている。

 この躍進の屋台骨となっているのは、豊嶋氏をはじめとするエンジニアたちが個々の現場で積み重ねてきたノウハウだ。

 「似た現場はあっても、全く同じ現場はない。流れる水の質が異なれば、堆積する汚泥の性状、固着具合も違う。管閉塞の進行度合いによってかけられる圧力も異なる。この場合はどう対処すべきか。含氷率を下げてみようか、配管の逆側から洗浄をかけてみようか。もっと上手いやり方はないか…こんなことを日々考え、現場とにらめっこの日々でした。」

 豊嶋氏は入社当初から技術営業・現場施工にひたすら取り組んできた。100件以上の現場を手がけ、気が付けばパートナー企業や顧客である事業体など、多くの関係者から頼られる存在となっていた。


AI技術が導く新たな可能性

豊嶋氏

 同氏らが現場での対話からすくい上げた自治体の共通の悩み。それは、洗浄による延命化を実行に移そうとしても、計画策定の壁に直面してしまうという実態だ。こうした現場の声が、次の課題解決のアイデアへと結び付き、ビジネスモデルの変革を促していく。

 「管内洗浄による延命化のメリットを感じつつも、『実際にどこの路線から行えばいいか』といった判断や計画づくりで足踏みする自治体が多いのも事実。事業体がその都度発注する形では、予算取りの面でも業務の継続性を担保しにくい。そのサポートを求める声が多く寄せられていた」。 

 これに対し東亜グラウト工業では、管内洗浄のさらなる展開を見据えている。キーワードは「AI技術とのシナジー」だ。

 同社では現在、AIを活用し、各事業体が抱える問題や課題、実施条件などを設定し、複数の選択肢の中から最適な対策を導き出すソリューションを導入している。各事業体の管網データに、濁水履歴や発生位置、管内の流速や滞留状況などを組み合わせることで、洗浄すべき管路やエリアを特定する——それが新たなソリューション「オプティクリーン」である。洗浄効果や作業範囲、実施時期、予算などを踏まえて最適化を行い、より効果的な管内洗浄計画の立案に取り組んでいる。

 各事業体の管網データに、濁水履歴や発生位置、管内の流速や滞留状況などを組み合わせることで、洗浄すべき管路やエリアを特定する——それが新たなソリューション「オプティクリーン」である。洗浄効果や作業範囲、実施時期、予算などを踏まえて最適化を行い、より効果的な管内洗浄計画の立案に取り組んでいる。

 オプティクリーンが目指すのは、単純な優先順位付けではない。アイスピグ管内洗浄工法と、比較的コストを抑えやすいウォーターフラッシングなどを組み合わせ、事業体の課題や予算に応じた洗浄計画を策定することだ。実現すれば、限られた予算の中で洗浄効果を高めるとともに、濁水の発生を未然に防ぐ予防保全型の管路管理につながることが期待される。


上下水道DXの先頭に

 蛇口を捻れば清澄な飲み水が届く。そうした当たり前の日常を維持するためのコストや労力について、これまで世間一般で取り上げられる機会はそれほど多くはなかった。ただ、日本の上下水道事業が直面する人・モノ・カネの問題は、加速度的に深刻化しており、このままでは安全な水へのアクセスさえ危ぶまれる日が訪れかねない。

 そうした危機的未来を回避し、インフラを守り抜くためには、いかにコストとリスクを抑えながら、人手や労力を最小化する仕組みへ転換していくかが問われている。

 東亜グラウト工業が、アイスピグ事業を起点に描くメンテナンスビジネスも、まさにその思想と軌を同じくする。管内洗浄の世界にDXの発想を取り入れ、新たな挑戦を続けていく同社の姿に、フロントランナーとしての矜持を感じさせる。


記者の視点

 入社1年目の4月、上司に連れられ初めて東亜グラウト工業に訪れた。当時4階に新規事業推進室があり、会議スペースで室長の大野さんにアイスピグ管内洗浄工法のレクチャーを受けた。大阪府流域の汚泥圧送管の事例を紹介してもらったが、それが本紙で取り上げた初の事例記事だったと思う。新米にはハードルが高く、記事は上司が書き上げてくれた。今、あらためてその記事を読み直すと懐かしさが込み上げてくる。
 同社の新規事業推進室では当時、インフラメンテナンス分野を中心に多くの案件が同時並行で企画・事業化していた。どの技術も持続的成長をけん引する主力事業として大きな期待を背負う一方で、陽の目を浴びないまま静かに幕引きとなったものもあった。アイスピグが今日の成功を収めることができた背景には、将来的な上下水道メンテナンス需要を見越した先見性もさることながら、時代が追いつくまで直向きに市場開拓に取り組み続けてきた下積み、そして関係者の熱意あってこそだ。
 本邦初お披露目の「革新的技術」としてセンセーショナルなデビューを飾って約15年。気が付けば累計洗浄実績500件を突破し、引き合いが絶えない状況を見るに、技術の一般化はある程度済んでいるように思う。これからは管内洗浄技術のベンチマークとしての位置付けが、より鮮明になっていくのだろう。
 これまでの工法開発、メーカー、工事会社としてのポジションに加え、AI活用、計画策定支援を切り口にコンサルの一面も持ち始めている。こうしたバリューチェーン展開(もしくは包括提案)こそ、今、水道の現場がまさに求めている寄り添いなのではないだろうか。

アイスピグ動画「水道配水管洗浄(Full Version)」

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Profile

 東亜グラウト工業株式会社は1958年(昭和33年)に設立されました。創立当初は、独自のグラウト工法で「地盤改良分野」を中心に国土建設の一翼を担いました。

 その後、社会資本整備の変遷に呼応する形で、時代のニーズに適応する技術を磨き上げ、また時には獲得することで業容拡大を図り、現在では「地盤改良事業」「斜面防災事業」「管路事業」の3つの柱を築くに至っています。

 「安心・安全な国民生活の実現」に向け、これから我々が直面する課題は大きく二つあると考えます。

 一つは平成25年に施行された国土強靭化基本法に示される防災・減災の街づくり、一つは高度経済成長期に集中整備されたインフラの老朽化対策です。特にインフラメンテナンスは限られた予算の中で、どう効率的かつ効果的に行っていくかが重要です。

 当社はこれらの課題に対し、新技術、新工法での貢献を目指すとともに、官民連携の新しいビジネス創出にもチャレンジしていきたいと思います。当社の今後にどうぞご期待ください。

Information

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