日本水道新聞社 電子版ポータルサイト

日本水道新聞社 × 日本水道新聞社
×
東亜グラウト工業株式会社

News

Contact

第25回日本水大賞 経済産業大臣賞受賞

「水循環に思いをはせる日」

 

「当たり前」の価値に気付きを

 

 東亜グラウト工業では、水インフラを支え、水災害に対処する技術と担い手を盛り上げる記念日活動の一環で、11月8日を「水循環に思いをはせる日」として記念日登録するなど、水インフラの持続という恒久的な業界目標の実現に向け、これまでの延長線にとらわれない斬新な試みを行っている。その企業活動が注目を集め、第25回「日本水大賞」にて経済産業大臣賞の栄誉に輝くなど、今後の活動のさらなる広がりに期待が持てる。今回、同社が水循環に込める思いをまとめた。


琵琶湖3杯分

 『山紫水明』という言葉がある。日の光で山は紫色に霞み、川は澄んで見えるなど、自然豊かで水資源に富む日本(語源では京都の山川を指す)の景観を称える四字熟語だ。美の感性の中にも、日本という国が古来よりいかに自然や水資源豊かな国であるかという一端を読み取ることができる。

全国の水使用量(国土交通省HPより)

 国土交通省の資料(右図)によると、日本の水資源の現状については、生活・工業・農業用水として年間約785億㎥(琵琶湖3杯分)もの膨大な量が消費されている。

 個人が水を消費する、というと目的別には炊事、洗濯、風呂、トイレが思い浮かぶが、例えば食物や工業製品を生産する際にも水という資源が必須な以上、ユーザーとして間接的にも水を大量に消費し、その恩恵に浴しているということになる。例えば、お茶碗1杯分のごはん(米)を作るのに水は400ℓ以上も使用・消費されているという。

 (企業活動等での水消費を無視した単純計算で)日本人1人当たり、1年間で直接・間接的に消費する水の量は25mプール1.3個分(約63万ℓ)と表すと若干イメージしやすいかもしれない。直接的には1日当たり200~300ℓ(年間約7~11万ℓ)程度とされているので、意識外(間接的)でいかに大量の水を消費しているかが分かる。

 ただ日本人にとって、水は蛇口をひねれば出てくるもの。水を消費するという行為は、2カ月に一度、水道料金上での数字の大小でしか意識される機会がないかもしれない。


飲水思源

 中国の故事成句に『飲水思源』という言葉がある。「他人から受けた恩を忘れてはならない(水を飲む時、水源のことを思え)」との意だが、他人からの恩にしても、水の恩恵に浴することにしても、これらは自ずと心の内からにじみ出る姿勢であり、強制される形での感謝や戒めの念では本質的な意味をなさない。

 ただ、現代社会において当たり前に存在する「水」の恩恵に対し、自発的に感謝を抱くことがあるかと聞かれても、はっきりと頷ける人はそう多くはいないだろう。

平成29年度下水道に関する意識調査(国土交通省HPより)

 少し古い資料だが、平成29年に国土交通省が実施した下水道に関する意識調査(右図)では、「普段生活を送っている中で下水道を意識したことがあるか」の問いに対し、20代、30代の60%以上が「あまり意識したことはない」「意識したことがない」と回答している一方で、70代以上の世代では「たまに意識している」「意識している」との回答が60~90%となるなど、下水道未普及の時代を知る世代とそれ以外の世代で「今では当たり前」にあるインフラへの意識に差があることを読み取ることができる。

 当たり前にあるものを意識することはできない。つまるところ、水インフラの役割や社会貢献の姿は見えにくく、その重要性は災害が発生するまで意識されることはあまりない。その災害についても、震度5強~6弱程度であれば、長期の断水やトイレの使用停止に陥るということは近年では稀なことになっている。

 そのことは災害大国である日本だからこそ、防災・減災を心がけたハード・ソフト対策に心血が注がれてきたゆえの賜でもあり、それは水インフラに携わる人の熱意、そして世界トップ水準のインフラ技術により、当たり前の日常が守られているということに他ならない。

 そして、その当たり前の存在と見なされている水インフラ施設の多くは、高度経済成長期ごろから急速に整備が進められてきたこともあり、現在では老朽化の波が押し寄せている。メンテナンスやリニューアルが重要になる中で、人・カネといったリソース確保に苦慮している状況にある。中長期で見やれば、危機的といっても過言ではないだろう。

 「数多くあるインフラ機能の中で、例えば下水道は災害時に替えの効かないものの一つです。ガスはライターで、電気は電池や太陽光パネル、水道はペットボトルなどで代用できます。しかし、下水道は代替の効くものがありません。災害時に人々が生きる上で一番大切なのが『水』ですが、避難所の衛生を保つためにも水の供給と同時に排泄物を集める下水道の機能も重要となります。下水道はわれわれが使用した水を輸送する重要な施設であり、この機能が損なわれると健全な水循環を保つことが難しくなります。人々が安全・安心に暮らすためには、この下水道管路を今後何十年とメンテナンスし続けていくことが必要なのです」――と同社の担当者は強調する。そのことは、同社がパーパス・長期ビジョンとして掲げる地方創生・地域再生への貢献を考える上でも柱の一つとなっている。

 【関連記事:100年企業への挑戦 ブレない「志」で ーなぜ今、パーパス経営が求められるのかー

 当たり前を享受している意味やその陰で汗を流す人々の姿を意識・認知されにくい現状であるからこそ、水インフラの置かれる現状、そして重要性を広く市民に知らしめるためにも、これまでとは異なるアプローチやきっかけが必要になる。


感謝と決意表明の日に

 水循環の一翼を担う当事者の一人として、東亜グラウト工業ではまさにこうした課題へと真摯に向き合い続けている。

 大量更新時代における担い手不足解決の一助として注目を集める光硬化工法の国内への導入・普及をはじめ、アイスピグ管内洗浄工法を起点とした水道・下水道・農業用水分野での業容拡大、管路耐震化技術「マグマロック工法」による国土強靱化への貢献――、わが国の管路メンテナンス・防災事業の第一線で活躍するなど、水インフラの持続を考えていく上で、同社は不可欠なキープレイヤーとして業界内で認知を広めている。

 また、「人」の育成・確保にも力を注いでおり、企業一社のリクルート活動の枠を越え、水ビジネス全体の未来につながる広報活動を展開するなど、自社の利益追求のみにとらわれない広い視野で業界の行く末を見つめてきている。

 そうした中、同社は一昨年、一般社団法人 日本記念日協会へ11月8日を『水循環に思いをはせる日』として申請し、記念日の登録を行った。

 【関連記事:水循環に思いをはせる日、11月8日を記念日に 東亜グラウト工業

日本記念日協会から山口社長(右)に登録証が授与された(令和3年11月2日)

 「水インフラの置かれる現状を見つめ直し、少しでも多くの方に水インフラの大切さに気付いてもらうため、当社では業界全体を盛り上げる広報活動の一環として行いました。日頃より縁の下の力持ちとして活躍されている、水インフラに携わる方々に対する敬意を示すとともに、年に一度は皆で『水循環』に思いをはせ、業界関係者への感謝の気持ちと、改めてわれわれ企業も今後も安全・安心な水循環システムをしっかり作り、皆さまの安全な暮らしを守っていくという決意表明をする日になるようにとの願いも込めています」――と同社の山口乃理夫社長は話す。

 日付の由来は、11(良い)、8(パイプ)という語呂合わせにちなんだもの。「8」という数字は、上下に並んだ2本の水道・下水道管に見立てることができるほか、横にすると「無限」を表す記号(∞)にも見えることから、これらを掛け合わせて「水の循環」をかたどるというコンセプトだ。

 記念日授与式でコメントした日本記念日協会の加瀬清志代表理事は「製品・サービス名の登録は多いが、業界のイメージアップを考えたものは珍しい。インフラメンテを考える象徴的な日になるのでは」と講評したように、業界内外から注目を集めていた様子。

 昨年には、オリンピックセーリング競技元日本代表選手の土居愛実さん、2022ミス日本「水の天使」の横山莉奈さんをゲストに迎え、同社の山口乃理夫社長ら3人による特別鼎談を企画。同社のYоuTubeチャンネルで配信するなど、一般市民にも興味・関心を抱いてもらえるようなコンテンツ制作・周知に取り組むなど、幅広い層に向けて『水循環』の大切さを発信している。

11月8日『水循環に思いをはせる日』 特別対談 ”人はなぜ「仮面」を被って生きるのか?”

日本水大賞の栄誉に

  • 画像
  • 画像
  • 画像
  • 第25回日本水大賞表彰式(令和5年6月13日)
  • 第25回日本水大賞表彰式(令和5年6月13日)
  •  

 こうした草の根活動が脚光と注目を集め、第25回日本水大賞において、「水インフラを支え、水災害に対処する技術と担い手を盛り上げる記念日活動」として経済産業大臣賞を受賞した。日本水大賞は、秋篠宮皇嗣殿下が名誉総裁を務める日本水大賞委員会(委員長=毛利衛日本科学未来館名誉館長)と国土交通省が主催するもので、水循環の健全化に資する優れた活動を展開した団体らを表彰するというもの。

 6月13日には表彰式が執り行われ、各賞について講評が行われる中、中谷真一経済産業副大臣は「1958年の設立以来、長年にわたり、下水道管の維持管理など、安全安心な水インフラの整備に取り組まれ、健全な水循環の実現に貢献してこられました。また、水循環の大切さを広く社会に理解してもらう活動に取り組まれており、2021年には11月8日を『水循環に思いをはせる日』として記念日登録するとともに、YouTubeを活用した情報発信などにも積極的に取り組まれています。こうした企業活動が、水循環の健全化に大きく貢献するとして、経済産業大臣賞受賞にふさわしいと高く評価されました。同社のように多くの企業が水循環の大切さを理解し、水循環の健全化に寄与する活動が広がっていくことを大いに期待しています」と同社の取組みを高く評価するとともに、今後の活動展開へ期待を寄せた。

 【関連記事:健全な水循環 後世に、北九州市らに栄誉 日本水大賞、秋篠宮さまがご出席


記者の視点

 日本水大賞は、地球全体を視野に水循環系の健全化や水災害に対して強靱な国土と社会の実現に寄与することを目的に、産官学のみならずNPO、一般住民発案の水循環・水防災の取組みに脚光を当てる取組みであり、過去の受賞企業・団体はこの四半世紀で300を超える。

 各事例を紐解くと、もちろんアプローチの方法は千差万別だが、その多くは生活の中での気づきや地域特有の問題意識が出発点。「水の恩恵に浴すことへの感謝」「水の恩恵を恒久的につないでいく使命」、そして「当事者意識をもって水文化・水環境を守り、地域社会をより良くする」という強い意志をそれぞれの取組みにおいて感じ取ることができる。水循環を支える縁の下の力持ちとは、水道・下水道事業に従事する職員・技術者に限らず、広義ではまさに彼らのようなNPOや一般住民も含むのだろう。

 今後、業界内で同じ志を持つ企業・団体との記念日に合わせたコラボレーション企画や、新たな切り口での広報活動、社内行事の充実はもちろんのこと、地域のコミュニティや経済活動の中で、この記念日をどのように浸透させていくかという点についても注目してみていきたい。

東亜グラウト工業株式会社の密着記事一覧

Profile

 東亜グラウト工業株式会社は1958年(昭和33年)に設立されました。創立当初は、独自のグラウト工法で「地盤改良分野」を中心に国土建設の一翼を担いました。

 その後、社会資本整備の変遷に呼応する形で、時代のニーズに適応する技術を磨き上げ、また時には獲得することで業容拡大を図り、現在では「地盤改良事業」「斜面防災事業」「管路事業」の3つの柱を築くに至っています。

 「安心・安全な国民生活の実現」に向け、これから我々が直面する課題は大きく二つあると考えます。

 一つは平成25年に施行された国土強靭化基本法に示される防災・減災の街づくり、一つは高度経済成長期に集中整備されたインフラの老朽化対策です。特にインフラメンテナンスは限られた予算の中で、どう効率的かつ効果的に行っていくかが重要です。

 当社はこれらの課題に対し、新技術、新工法での貢献を目指すとともに、官民連携の新しいビジネス創出にもチャレンジしていきたいと思います。当社の今後にどうぞご期待ください。

Information

下水道展'22東京 特別インタビュー ~2022 ミス日本「水の天使」横山莉奈~ 『2022 ミス日本「水の天使」に聞く』

下水道展'22東京 特別対談 ~VC 長野トライデンツ ゼネラルマネージャー 笹川 星哉×東亜グラウト工業(株)執行役員 南洞誠~ 『スポーツ× 共創』

下水道展'22東京 特別対談 ~東京大学 加藤裕之特任准教授×代表取締役社長 山口乃理夫~ 『変化の激しい時代に100年企業になるためには』

11月8日『水循環に思いをはせる日』 特別対談 ”人はなぜ「仮面」を被って生きるのか?”

東京オリンピック代表選手✖経営者 スペシャル対談 ♯1『時間の使い方』