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株式会社極東技工コンサルタント

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「人財」こそ最大の経営資源

株式会社極東技工コンサルタント代表取締役社長

村岡 基

歩み続けた半世紀

 昭和49年3月、村岡治氏によって設立・創業された極東技工コンサルタントは50年という節目の時を迎えようとしている。この半世紀、上下水道事業における計画設計および施設設計一筋にこだわり続けてきたDNAは今も息づいており、普及拡大から機能の高度化が求められる時代転換の中で、持続可能な水インフラを創造するクリエイティブ・カンパニーとして新たな一歩を踏み出そうとしている。

創業時の設計風景

 現社長の村岡基氏は大学・大学院で土木工学を学び、平成3年4月日本下水道事業団(JS)に入社。JSは、戦後、全国各地で水質汚濁などにより生活環境が深刻化してきた中で、全国に下水処理場等の建設を主導し、わが国を良好な水環境を創造する衛生国家へと導いたナショナル機関だ。

 そこでおよそ10年間、全国各地の下水道整備の最前線に携わり、その間、国際協力事業団(JICA、現国際協力機構)、建設省(現国土交通省)、厚生省(現厚生労働省)にも出向し、国内外の衛生環境政策を学んだ。

 磨き上げた衛生環境の知見を礎に平成12年9月、創業者でもある父・治氏が営む同社に転職。平成17年10月に治氏から代表取締社長を引き継いだ。その時40歳、百戦錬磨の経営者が鎬を削る水コンサルタント業界では最年少であった。


社員ファーストを掲げて

 創業者・治氏から社長業を引き継いで15年。この間、上水道事業においては国民皆水道が実現され、下水道や合併処理浄化槽などよる汚水処理人口普及率は9割を超えた。昭和から平成時代の主流であった普及拡大の路線から持続可能なマネジメントの実現へ、ビジネス形態も様変わりしている。

 「コンサルタントは『人』が最大の経営資源。こうした社会変動をいち早く察し、人口減少社会下における労働力不足を乗り越える新たな経営フレームが今まさに、求められている。一人ひとりが健やかで活き活きと、お互い支え合いながらワンチームで事業を展開していくことこそが、これからの企業活動の礎だ」との思いで、社員ファーストの経営的視点を掲げたさまざまな働き方改革に強い信念で取り組んだ。

 まずは、長期時間労働体質の是正に着手し、休日出勤の禁止や週ごとの残業時間における上限管理の厳格化など徹底した働き方改革を進めた。残業時間が少なくなったことでプライベートな時間が生まれ、友人とのコミュニケーションや家族サービスによるリフレッシュ、健康維持のための運動、資格取得のための勉強などワークライフバランスに大きく貢献。これらワークライフバランスが社内に浸透してきたことによって、頭脳集団として創造力や独創力が増し、顧客に対して高度な品質を提案できるまで磨き上げてきた。

 さらに、育児・介護を支援する独自制度を構築。同社は全社員のうち、約3割が女性。男性中心の業態の中で、女性社員が育児と仕事を両立し、本人が望む限り、できるだけ長く勤められるように、復職後の時間短縮勤務の期間を子どもの小学校入学までに延長するなど柔軟な対応を実施。もちろん男性社員も制度の利用が可能である。

社員食堂の活用

 介護についても同様だ。介護休業は、どのような介護を行うかを決定するための準備期間という考え方から、通算93日という限られた期間しか認められていない。

 ただ、介護は期間の目途が立てにくいといった点が懸念されることから、経済的支援として要介護状態に応じた補助制度を導入。継続的に発生する介護費用に安定して充当できることから受給社員から高い評価が得られたという。まさに、高齢化社会における企業経営のあり方を先導する取組みといえる。

 まだまだ、社員ファーストの制度は尽きない。「心身ともに健康であるべし」という信念の下、社員運動会の開催や社食の設置など、社員の心と体に気を配った取組みも行ってきた。

 また、6~10月にはノー残業マンスを実施。11時間以上のワーキングインターバル制度や有給休暇以外に1年で2回、15時退社が可能となるリフレッシュ退社制度、有給休暇の取得率向上に向けた年次有給休暇計画的付与制度、さらには、奨学金返還支援制度や社宅制度も導入するなど強いリーダーシップで働き方改革を実行してきた。これらの取組みが評価され、2020年から健康経営優良法人(中小規模法人部門)に認定され続けている。


多様な働き方が成長に

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  • 国際標準規格WGに臨むピエール氏(左から2番目)
  • 女性社員会議の様子

 もともと創業者の治氏の時代から「社員は人財」という文化が根付いていた。意欲さえあれば、財政的にも時間的にも社員のスキルアップに対して積極的に支援をしてきたことから、多種多彩な社員が多いことが見てとれる。

 日本サニテーションコンソーシアム(JSC)のフラマン・ピエール調整官は歴とした極東技工コンサルタントの社員だ。JSCはアジア・太平洋地域における水の衛生分野を担うナレッジハブ組織で、ピエール氏は2009年に同社から出向し、アジア太平洋地域の国々の「衛生」に関する政策的・ 技術的能力の向上をはじめ、 下水道の整備、トイレの普及、浄化槽やし尿収集処理等のオンサイトサニテーションの開発・普及に奔走している。

 ピエール氏はフランス代表に選出されるほどの柔道家。実務の傍ら、慶應義塾大学の柔道部や東洋大学のコーチなど多彩な顔を持つフランス人だ。立命館大学の柔道部で指導していた時に、同大柔道部出身の先代の治会長に誘われ、同社の社員になった。

 東京本社総務部長の東中美保さんは、法務博士と技術士補(上下水道部門)の資格を持つ、まさに「多種多彩」な人材の一人だ。元々大阪本社総務部で勤務していたが、結婚を機に退職。その後、配偶者の東京転勤を契機に、同社に再入社した。再入社後は企画部に所属し、基社長の下で新事業発掘のサポートを行った。その中、環境省主催の浄化槽タウンミーティングの運営業務に携わる中で、事務職ながら技術士補の資格を取得。そんな時、社長から「ほかにもやりたいことがあるならやってみたら」と背中を押され、法科大学院への進学を決意したという。

 大学院で学んだ3年間は通常業務をセーブしながら、業務の一環として勉学に勤しんだ。「辛いこともあったが、世代の違う同級生とともに学ぶことが励みになった」と当時を振り返る。それまでは、自分にしかできない仕事がないと思い、「自信がなかった」という東中さんだが、法科大学院に行ったことで、論理的な思考や法的な知識が身につき、物事の考え方が大きく変わったと話す。現在はこれまでの業務に加え、新しい制度づくりや法務関連業務などにも携わり、仕事の幅が広がったという。


強さの源泉ここにあり

 同社の強さの源泉は、専門有資格者の割合が非常に高いことにある。全社員140名のうち技術職は83名。この中で技術士を取得している社員は52名(延べ67科目)と6割を超える。いわずもがな技術士は、国によって科学技術に関する高度な知識と応用能力が認められた技術者で、科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威のある国家資格だ。この技術士資格について、社長の基氏は全技術職社員の8割に取得させていきたいと考えている。さらに、建設コンサルタント業界では必須資格となっているRCCMの有資格者は21名(上水道及び工業用水道7名、下水道7名、その他7名)で技術社員の2割を占めてる。

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  • 技術者研修
  • 社長自らが講師に

 「これがわが社の強み」(基社長)と自負するだけあって、社員の資格取得に向けた研修・教育制度は手厚い。

 技術士資格取得や第1種下水道技術検定合格に向けた資格取得講習会では、講義はもとより模擬面接が、研修・教材研究や試験問題研究などの積み重ねによって生み出した独自のカリキュラムで行われている。実践経験に富む有資格者のマンツーマン指導によって確かな知識習得に導き、高い合格率を誇る。社長自らが講師として立ち、模擬試験の問題作成に携わることもあるという。その甲斐あってか、技術士試験に合格する若手社員も多く、この4年間で29~31歳の合格者が6名に上った。

 また、実践力向上にも力を注ぐ。再構築工事現場や資機材製造工場、浄水場・下水処理場のなどフィールド研修を重視し、社内技術発表会も定期的に行っている。この発表会はプレゼンテーション方式で行われ、実際に携わった業務の問題点の検証とともに成果を共有することで技術の研さんを図り、顧客満足度の向上へ実践力と現場力を磨いている。

 基社長はJS時代、地域の異なる文化や生活習慣・環境を数え切れないほどその目で見てきた。だからこそ「現場百遍とまでは言わないが、現場を知らなければお客さまに最適なコンサルティングはできない」との信念を持ち、社員は必ず現場に何度も足を運ぶことをルーティンにしている。


未来の水インフラの礎に

 本業はといえば、社員ファーストを掲げた健康経営を軸に、社員の創造力、行動力、そしてモチベ―ジョンが向上し、強い経営基盤を築きつつある。管路再構築の実施設計やストックマネジメントに伴う基本計画策定支援、さらには国内初の雨水流域下水道や内水排除基本計画等を手掛けるなど、未来の水インフラの礎を築くプランナーとして、時代背景をにらんだコンサルティングに針路を定めてきた。

 中でも、都道府県単位で効率的な汚水処理事業を配置していく都道府県構想は同社ならではの発想で、現実と未来をつなげるクオリティの高いプランを提供し、多くの顧客から高い評価を得ている。基社長は、厚生省への出向時、合併処理浄化槽などの個別処理施設の優位性や柔軟性に触れ、集合処理と個別処理のベストミックスこそ地域の持続につながると見抜いた。この広く深い知見が礎となって、冷静な経済比較と良好な水環境の実現から最適なバランスを描き、同社の目玉に成長している。

 都道府県構想は、市街地、農山漁村等を含めた市区町村全域で効率的な汚水処理施設の推進をするため、下水道事業、農業集落排水事業、合併処理浄化槽整備事業といった各種汚水処理施設の有する特性等を踏まえ、建設費と維持管理費を合わせた経済比較を基本としつつ、水質保全効果、汚泥処理方法等の地域特性や地域住民の意向を考慮し、効率的かつ適正な整備手法を選定する未来ビジョンだ。

 今の日本の上下水道インフラは人口増を想定して構築された施設がほとんどだが、これらの老朽化が進み、人口減少社会に突入したこれからはダウンサイジングが必須となる。しかし、そうした中にあっても規模縮小といった単純な発想ではなく、地域の過疎化の状況に合わせた集合処理から個別処理への転換など、生活排水処理全般の知見を持つ同社へのニーズはますます高まってこよう。

 創業50年を機にさらなる飛躍の黎明期にしたい。地域住民のための水インフラを理念に、上水道分野の拡大など再構築支援や小規模自治体経営のサポートなど、社員ファーストによる健康経営企業として磨いた人財を強みに、持続可能な水ンフラの未来図を届けるクリエイティブ・イノベーション企業へ歩みを止めない。

 経済界が潮流としている社会貢献(CSR)の発展形として、社会ニーズを組み込むことで社会的価値を創造し、その結果、経済価値が創造される社会価値と企業価値の共有価値創造へ、次なる航路はすでに定まっている。


■令和3年度 写真コンテスト 入賞作品

水の都大阪

 同社では、令和2年11月に「会社概要」をはじめとするKGCレポートや各種パンフレットなどの印刷物に掲載する写真素材を収集することを目的とした社内コンテストを試験開催。その結果、延べ53件の応募があったことから、昨年9月に「会社概要2022」に掲載する写真を募る第1回写真コンテストを開催した。

 対象は全従業員で、テーマは「水や自然に関するものや都市風景」。今回は53件の応募の中から、役員および企画本部の審査を経て、最優秀賞1件、優秀賞1件、KGC賞1件が入賞に選ばれた。

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  • 滝と虹
  • 桜並木
  • 瀬戸内
  • 夕暮れの橋
  • 水辺の子供

記者の視点

 関西では名の知れた水コンサルタントである。「水コン」といえば、上下水道の専門知識を有する頭脳集団としてわが国の公衆衛生の向上をけん引してきた。ただ、近年は、少子高齢化の進展に伴う生産年齢人口の減少に加え、上下水道インフラの概成も相まって、地方自治体における上下水道専門職員が急減。これらを背景に水コンに委ねられる負担が増え、長時間労働を避けたい水コン各社において最適な執行体制の構築は大きな課題となっている。

 論客として知られた創業者・治氏から引き継いだ現社長の基氏は社員ファーストを掲げた働き方改革を断行。全社員と面談し、社内に根付く病巣を見抜き、時間外労働に対する厳禁化、育児や介護における休職制度や時間短縮勤務制度、住宅補助制度、女性社員会議や年代別社員会議の開催、社員旅行、社員運動会など、社員の心と健康を重視した健康経営を掲げ、業務に集中できる職場環境の創出に奔走。案件獲得=長時間労働といった量的視点の考え方から政策転換を行い、ワークライフバランスの改善に注力。社員一人ひとりのクオリティが向上することで、頭脳集団としての偏差値が格段に上がってきている。何度か社内会議に参画させてもらう機会を得たが、とにかく明るい。安心して集中できる職場環境があるからこその光景だ。

 社員は他の人には代えがたい「人財」であるとの基社長の信念の下、技術士など有資格者取得にも力を注ぐ。技術職の有資格者率を現在の6割強から8割まで向上させ、事務職にも行政書士など業務上必要な資格取得を支援し、極力外注せずに内製化によるワンチーム体制で次時代を見据える。古い皮を脱ぎ捨て、社員一丸となって歩み始めた新たな前進に注目したい。令和時代を先導する企業像の構築に期待し、これらから導かれる水インフラの未来の礎を築かんとするコンサルティングから目が離せない。

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