管清工業は平成27年度から小笠原村・父島のコミュニティ・プラント(コミプラ)の運転管理業務を請け負っている。
その後業務は徐々に拡大し、平成30年度からはこれに加えて、父島の扇浦浄水場の運転管理の補助業務や母島のコミプラの運転管理、さらに母島の沖村浄水場の運転管理、扇浦浄水場の運転管理と、まさに同村の上下水道施設を一体で管理している。
管路管理のパイオニアである同社はなぜ小笠原という離島で新たな業務を手掛けることになったのか――。その真相を紐解くべく、小笠原村に向かった。
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管清工業は平成27年度から小笠原村・父島のコミュニティ・プラント(コミプラ)の運転管理業務を請け負っている。
その後業務は徐々に拡大し、平成30年度からはこれに加えて、父島の扇浦浄水場の運転管理の補助業務や母島のコミプラの運転管理、さらに母島の沖村浄水場の運転管理、扇浦浄水場の運転管理と、まさに同村の上下水道施設を一体で管理している。
管路管理のパイオニアである同社はなぜ小笠原という離島で新たな業務を手掛けることになったのか――。その真相を紐解くべく、小笠原村に向かった。
「東洋のガラパゴス」と呼ばれる小笠原諸島は、東京都心から南に約1000km離れた太平洋上に位置する30ほどの群島。飛行場はなく、本土との交通アクセスは片道24時間の定期船「おがさわら丸」が週に1便程度運航するのみ。父島をはじめ、母島列島、硫黄列島、西之島、南鳥島、沖ノ鳥島から成るが、父島と母島のみが有人島であり、その他の島々は、基本的に全て無人島である(自衛隊の施設のある硫黄島と、自衛隊と気象庁の施設のある南鳥島には隊員や職員が在住)。令和8年1月1日時点の人口は、父島2039人、母島422人。
誕生以来、一度も大陸と陸続きになったことがない海洋島であるため、多くの固有種・希少種が生息・生育し、特異な島しょ生態系を形成。平成23年には世界自然遺産に登録されるなど、世界的にも貴重でかけがえのない自然の宝庫となっている。
亜熱帯海洋性気候を生かし、島ではパッションフルーツやマンゴー、レモン、トマト等の生産・ブランド化に力が入れられている。海域にはイルカ、クジラ、ウミガメといった海洋動物などが生息しているほか、陸域には数多くの固有種が生息。特にカタツムリ類などの陸産貝類は顕著な種分化が生じ、今なお進化を続けている。
小笠原村を語る上では、その歴史も忘れてはならない。昭和16年に太平洋戦争が開戦、陸海軍は父島の防衛を強化するとともに母島、硫黄島にも防備を施し、小笠原は軍事色に染まった。その後、昭和19年には戦争の激化により、島民6886人が本土に強制疎開。翌年には硫黄島に米軍が上陸した。同年8月15日に終戦を迎えたものの、火山列島を含む小笠原諸島は連合国施政権下に入り、昭和43年6月26日にようやく日本に復帰、旧島民の帰島が始まったのである。
小笠原村では汚水の適正処理による「生活環境の保全・自然環境の保護」を目標に、生活排水処理施設整備を進めており、コミプラと浄化槽を併せた汚水処理人口普及率は父島・母島ともに概成している。令和8年1月1日時点の汚水処理人口は、コミプラ2238人(父島:1821人、母島:417人)、浄化槽ほか223人(父島:218人、母島:5人)となっている。
一方、水道事業については、昭和43年の返還後しばらくは「暫定措置等に関する法律」によって水道法の適用を受けない水道として運営され、返還から5年後の昭和48年に、父島簡易水道事業および母島簡易水道事業として事業認可を受け、創設された。以後、父島と母島は給水人口および給水量の増加、浄水方法の変更を目的として拡張事業を行い、別々に運営していたが、平成26年3月をもって母島簡易水道を廃止し、同年4月1日から父島に統合、小笠原村簡易水道として事業を開始している。令和8年1月1日時点の給水人口は2454人(父島:2037人、母島:417人)。
父島と母島には合わせて浄水場が2カ所、コミプラが2カ所、浄化槽57基のほか、6カ所のダムがある。
この中、管清工業は同村のコミプラ、管路施設、中継ポンプ場、マンホールポンプ、浄化槽、浄水場の管理および検針等を担っている。
始まりは平成27年で1期目(平成27~29年度)、2期目(平成30~令和4年度)と続き、現在は3期目(令和5~9年度)に入っている。1期目は父島のコミプラの運転管理業務から始まったが、徐々に業務が増えていった。2期目からは扇浦浄水場の運転管理補助業務と母島のコミプラの運転管理、沖村浄水場の運転管理補助業務の追加、包括委託3期目の3年目からは村役場から浄水場における運転管理の技術移転が完了したため、自社単独(村役場の補助なし)による扇浦およびの沖村浄水場の運転管理も請け負うなど、今では同村の上下水道インフラのほとんどの維持管理を一手に引き受けている。
小笠原で働く同社の社員は6人。島で採用した社員もいれば、島での暮らしを希望し、異動してきた社員もいる。小笠原出張所の小泉和也所長は、東京本部公共事業部工事部との兼務であるため、島へ足を運ぶのは2~3カ月に1回程度。基本的には、父島に5人、母島に1人の社員が常駐している。限られた人数で24時間、365日浄水場およびし尿処理場の運転管理を担っているので、不測の事態に備え、「誰でも同じ業務ができるような体制づくりをしている」と小泉所長は言う。
同社は単に施設を管理するだけでなく、さまざまな取組みを試行している。包括委託に至る前、管更生工事で島を訪れた際に同村が不明水に悩んでいることを聞き、コミプラにつながるパイプの見直しを実施。直接誤接および間接誤接を改善したことで、不明水が減少、流入量、処理量ともに減らすことでコストの削減につながった。委託後は日々の運転管理に加え、薬品の一括購入でコスト縮減を図ったり、コミプラ内のブロワに振動測定器を付けたりすることで、故障の予兆を見逃さないようにするという工夫も凝らす。
父島のコミプラは海に面しているため、台風で建物の屋根が飛んだり、海水および紫外線の影響で建物等の劣化・腐食が進行しやすい。また、設備や備品は全て船舶輸送。基本的に島で調達できるものはないため、より一層の予防保全が求められるという小笠原ならではの苦労もある。
また、同村ではかねてから、汚泥の発生量縮減および島内での消化を目指してきた。しかし、島には汚泥処分施設がなく、以前は希望者の元へダンプで汚泥(肥料登録済み)を運搬していた。現在は、浄水場およびコミプラで発生した汚泥を一度仮置き場に運び、その後浄水発生土と下水汚泥、伐採した外来種の木材から作ったチップと混ぜて、改良土にしている。そのため、同社では実験的な試みとして、村内の3カ所でこの改良土を活用して、特産のバナナや島レモンを栽培しているというのだが、「明らかに生育状態が良い」と教えてくれた。
そして、離島ゆえにDXの活用が重要になる。父島と母島は約50km離れているため、定期運航するははじま丸で片道約2時間の距離。同社は処理場、管路の重要書類を電子化したほか、維持管理記録を保存するデータベースを構築。これによりいつでもどこからでもスマートフォンやタブレットで施設の運転監視ができるため、父島にいながら母島の施設の状況をつぶさに確認することが可能となった。
小泉所長は「世界自然遺産である小笠原の水を守るわれわれは〝エコレンジャー〟の気持ちで日々の業務に努めている」とやりがいを覗かせる。
この管清工業の取組みを小笠原村の方々はどう見ているのか――。小笠原村役場の職員から村長になった渋谷正昭氏に同村の水インフラの持続に向けて、苦労してきた歴史や思いを聞いた。
◇小笠原の水資源
小笠原の海がきれいなのは一目瞭然だと思いますが、飲み水の確保については苦労してきた歴史があります。返還当初は東京都の職員が水作りを始めて、そこから徐々にプロパー職員が入ってきて、現在に至っています。父島には4カ所のダムがありますが、海と同じようなきれいなブルーの水が流れてくるわけではないので、なかなか苦戦してきました。
私は元々役場の職員なので、父島と母島の浄水場を更新する時にいろいろな技術を検討している姿を横目にしてきたので、現在、MIEX®処理システム(帯磁性イオン交換樹脂を用いた有機物除去システム)を導入してきれいな水を確保できるようになったのはとても素晴らしいことだと思っています。
元々小笠原は、本土の東京に比べると雨の少ない場所です。当村も何年かに1度は渇水があります。直近では平成31年に大渇水があり、それを契機に海水淡水化装置が導入されました。当時は残っているダムの水とこの装置で作った少し塩分の入った水と混ぜて浄水を供給していたくらいです。
台風や大雨が来ると一気にダムが満水になるのですが、そもそものパイが少ない。だからと言って、どんどんダムを作れるか、規模を大きくできるかというと、自然環境の保護の観点からそれも難しいのが現実です。降るべき時期に雨が降らないと渇水になってしまう、そういう意味では豊かな水源があるとは決して言えないのが現実です。
◇上下水道施設運営管理委託の経緯とメリット
包括委託の導入当初は、ユーティリティの調達や施設の一体管理による経費削減が主な目的でした。しかし、だんだんわれわれ行政側も職員の退職などにより人手不足が顕著になってきました。こうした背景から今となっては、コストというよりも人手としての助けが必要になっている状況です。
以前も上下水道施設の運転管理の一部を地元企業に委託していたのですが、あくまでもわれわれの指示の上でという仕様発注の形でした。こうした中、たまたま管清工業が当村の管更生工事を受注したことがありまして、その際に技術力の高さはもちろん、研修や社員教育もしっかりしている会社だということがわかり、この先いろいろな課題解決に協力していただけるだろうと思い、お声がけしたことがきっかけです。
当初はコミプラの運転管理から始まりましたが、現在は父島・母島両方の上下水道施設の管理を担っていただいています。おそらく人の手配で苦労されているところもあるかと思いますが、日々頑張ってもらっていますので、本当にありがたい限りです。
皆さんご存じの通り、管清工業は管路管理を生業としている会社ですので、上下水道施設の運営管理についてはノウハウがないというところからのスタートでした。ですので、10年かけてわれわれから技術移転をしていきました。先ほども申し上げた通り、管清工業は社員が勉強できる環境が整っているので、水道の研修を受けていただくなど委託の中でしっかりと社員教育もしていただきました。
委託の一番のメリットは人手不足、技術継承ですが、情報を一律に共有できる点についても大いにメリットを感じています。委託業務の中でクラウドによってデータ管理ができるシステムを立ち上げていただきましたので、母島の状況も一目でわかるようになりました。故障履歴が残っていきますし、現地に赴かなくても、母島の浄水場やコミプラの運転管理の状況を把握することができるのです。水質データもスマートフォンのアプリですぐに確認できますし、点検時もスマホを使って数値とデータを入力していると聞いています。これはわれわれ行政ではなかなか手が付けられなかったことなので、包括委託ならではの良さだと思います。
◇心豊かに暮らし続けられる島
「第4次小笠原村総合計画 基本構想・基本計画」では、小笠原村の目指す将来像を「心豊かに暮らし続けられる島」と定めており、職員には常々、村民の幸せを願って仕事をしてほしいと伝えています。
それを建設水道課や水という面で捉えると、やはり上下水道は大事なインフラの一つで、あって当たり前のものなのです。先般、八丈島では台風により水源等が多数被災したことにより最大4100戸が断水したことが記憶に新しいと思います。インフラのうち、ガスは農業協同組合、電気は東京電力が担ってくれていて、唯一村が主体で運営しているのが水です。安全な水を供給する、排水をしっかりと基準に沿って海に戻すという大切な事業を担っているという意識を持ち続けて、これからも末永く小笠原の水を守っていただけることに期待しています。
ダムから浄水場、コミプラまで上下水道施設を一体的に管理することで、水の流れを把握することが可能となり、効率的な維持管理や最適な計画の策定、ひいては高レベルでの事業運営を実現することができる。小笠原村と管清工業が構築している関係、そして業務のあり方はまさに水の官民連携(ウォーターPPP)の先駆けであり、理想形とも言えるのではないだろうか。
そして小笠原まで足を運んで感じたのは、管清工業がいかに地元と密着し、村民から信頼されているかということだ。どこに行っても「管清工業=水」がしっかりと浸透していた。住民同士の結び付きが強いこの場所で、これほどの信頼を得るまでにどれだけの年月をかけたのだろうか。村と村民に真摯に向き合ってきたからに違いない。
主要産業が観光であるこの地で、多くの人を魅了してきたのは何といっても〝ボニンブルー〟の海だ。実際この海に魅了されて移住してきた人も少なくない。仮にこの美しい海が汚れてしまうことがあれば、住民の生活は一変してしまうだろう。管清工業は単に上下水道施設の管理をしているのではない。絶対に守らなければならない、この村の唯一無二の宝を守っているのだ。
1962年(昭和37年)管清工業株式会社は誕生しました。
以来、約60年にわたり、一貫して「管」(パイプ)の維持・管理を行い、日本の下水道インフラを支えてまいりました。
下水道の管路網を専門的に管理、清掃することが当社の社名=管清工業の由来となっています。まさに「名は体を表わす」という言葉を自負しています。
創業以来、ずっと変わることのない思いは、「市場は自分で作り同業他社と共に開拓していく」こと―――。社員は1から2を生むのではなく、0(ゼロ)から1を生むことに力を注いでいます。創造し、多様なインフラの価値を創り出してきたのです。
下水道は今や、この現代社会では欠かせない存在となりました。例えば、震災時にトイレが使えなくなると途端に不自由な生活を強いられます。また、下水はウイルス発生の予兆を知る事が出来ると言われています。現代に生きる我々には、もはや当たり前の存在とし、流れを止めることの出来ない重要なインフラと位置づけられているのです。
さらに、私たちはこの下水道を通じ環境教育の一環として、全国の学校に訪問し下水道の「出前授業」を通した啓発活動を行っています。子供たちに、美しい環境を残していくことが我々の大きな役割だと考えています。そして、その使命を胸に、日本全国でより良い生活環境を創出するために、管清工業株式会社は24時間365日稼働し、常に社会基盤を支えているのです。
美しい地球のために―――我々と一緒に、未来の地球環境を創り上げていきませんか。
管清工業がある世界