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株式会社フソウ

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新たなブランド構築への挑戦

-事業構造改革を足掛かりに未来志向型ビジネスへ-

 

フソウ代表取締役社長執行役員
角 尚宣氏に聞く

原点回帰と未来創造の二軸で

 1946年、香川県丸亀市で産声を上げたフソウ。創業時は塩田に海水を送水するパイプやバルブなどを販売する塩田事業を手掛けるも、高度経済成長による文化的な生活環境への国民希求を背景に上下水道事業に重点。水道用資機材の販売から鋼板製異形管の製造・販売、浄水場・下水処理施設の設計・施工・維持管理といった上下水道事業全般を手掛ける総合水企業にまで成長した。

 今日まで77年を歩む。「水と共に生きる」――。

 創業者・谷欣一氏が掲げた企業理念を継承すべく、2021年に創業家から角尚宣氏が代表取締役社長に就任。普及拡大から持続可能へ事業の本質が移り変わってきている転換期にあって、「賢者は歴史から学ぶ」のごとく、原点回帰と未来創造の二軸で社会環境の変移に即応すべく、発展的な創造をしていくサスティナブルな企業基盤の構築を目指す。そして、国民に不可欠な水インフラ機能の持続へ社会貢献を果たしていく。


持続に向けて今、何をすべきか

 日本の水道普及率は98.2%、下水処理普及率は80.6%にまで上り、市場はほぼ飽和状態かつ縮小傾向にあるのではと懸念されている中でも、角社長は全くぶれない。

 「当社の企業理念は『水と共に生きる』。これは創業以来77年間脈々と受け継がれてきた当社のスピリットです。これからも事業の中心は「水」であり、上下水道事業から逸脱することは決してありません。確かに普及促進の時代が続いた上下水道産業界から見れば不安視する声も出ると思いますが、国民の誰もが安心・安全な水インフラサービスを享受できる目標を達成したのですから、むしろ社会貢献を果たしたと言っていいと思います。それよりも国民生活に不可欠なこの水インフラサービスを持続可能にするために何をすべきか、こちらをもっと真剣に考える時期にきているのではないでしょうか」と冷静だ。

 少子高齢化の進展や生産年齢人口の減少が徐々に進む人口減少社会は、国内需要減少による経済規模の縮小や労働力不足、医療・介護費の増大による社会保障制度の給付と負担のバランスの崩壊、財政危機、基礎自治体の担い手不足などさまざまな面で社会、経済が深刻化していくことが懸念されている。24時間365日片時も機能停止が許されない水インフラサービスも同様に、設備が整ったとはいえ全てがオートマチックに機能しているものではなく、さまざまな人の手によって日常の安心・安全・安定を構築している。しかしながら、これらの担い手が年々減少してきており、水インフラサービスの持続に危機感が漂いつつある。

 これらを背景に、角社長は、これまでの経験値や価値観だけではこれからの時代に対応できないとする一方で、発想の転換によって新たな社会を創造できる可能性を秘めていると強調。次世代を担う教育現場においては、知識基盤社会、多文化共生社会、情報化社会の本格化・高度化が進み、これまで誰も経験したことない、複雑で激しく変化していく社会に対して「生きる力」を育んでいくことが主流となっており、まさにこれからの時代を生き抜くために、志向の転換を図り、これまでの企業文化の再構築を掲げるとともに、仕様発注・請負型ビジネスモデルから提案型ビジネスモデルに転換すべきと提唱。

 同社を含めたグループ企業を統合するフソウホールディングスは、長期ビジョン『FUSO VISION 2030』を策定。「地域の数だけアンサーがある。Answers for Community」を掲げ、上下水道事業、住宅・設備事業、再生可能エネルギー事業の三つの事業領域を融合させ、地域のレジリエンス・地産地消・多様性をデザインし、地域の暮らしを創造する。

 その中でフソウはグループの中心的存在として、上下水道事業を核に事業展開を図っていく。2021~2029年度の9年間を描いたこの長期ビジョンは、前期・中期・後期の3年単位の中期経営計画で区分し、それぞれ具体的な経営目標を掲げ、未来志向型へ歩んでいくロードマップだ。


上下水道ゼネラルコンストラクターとして

 今年度末までの前期中期経営計画は、「事業構造改革」を旗印に、意識改革を通じた時代の変化やニーズに適応できるマインドセットの醸成に重点。77年もの歴史に敬意を示しつつも、未来志向へ既存体質からの改善を強力に推進してきた。

 フソウは現在、事業領域ごとに区分した事業別組織で執行。これまでは北海道から沖縄に至るまで全国一円の支店・営業所単位での拠点別組織を敷いていたが、拠点独自の裁量・価値観にこだわり、企業全体としてのスケールメリットを発現しにくい環境であったことから、全体最適解を求め、事業別組織に改編。さらに、既存のビジネスモデルから発展形モデルに改善すべく、価値観が共有できる社員を適材適所に配置。経営基盤の強化へ今年度は前期中期経営計画の最終年度でもあることから、次へのステップに向け、強力に体質改善を図っていく方針だ。

 これら事業構造改革による強固な経営基盤を引っ提げ、2024年度から始まる次期中期経営計画では「新たなブランド構築への挑戦」を掲げ、未来志向型の上下水道ビジネスへ本格的に舵を切る。

 フソウは、水道資機材の販売や鋼板製異形管の製造・販売といった管路ビジネスとともに、浄水場・下水処理施設等のEPC(設計・調達・建設)とO&Mビジネスも手掛ける上下水道ゼネラルコンストラクターだ。上下水道の普及拡大がメインであった時代においては、それぞれの特性を生かした事業展開を図ってきたが、普及拡大から持続可能・基盤強化へ事業目標が変革してきていることから、上下水道分野の施設と管路の両輪を専門的に手掛ける唯一の企業としてその強みを生かし、施設・管路一体型提案を推し進め、全体最適の視点で地域の持続と基盤強化をデザインしていく。デザインするに当たり、最も大切にしている視点は「地域の特性」。自社技術・製品に固執せず、他社の技術製品であっても地域特性の最適解であれば積極的に取り入れていく。

 また、PPPやPFIといった官民連携型のビジネスモデルが主流となる中、事業別組織から各事業部の専門性を融合させた機能別組織への転換を模索。〝情報〟の流動性を高め、ソリューション・サービス開発のスピードを上げていく。その第一弾として、事業部の連携横断組織として3年前に組成したソリューションデザイン事業部の強化を図り、One FUSOでの提案の質を高める。

 当然ながら、One FUSOでの提案の基盤となる既存事業の強化にも余念がない。建設事業ではEPCだけに注力するのではなく、O&M体制を強化すべく投資を加速させる。商社事業では資機材供給だけにとどまらず、工事を含めた役務提供やきめ細かい物流サービス、管路DB方式の提案・サポートなどを手掛けていく。製造事業では新たな領域へ技術開発を進めている。海外事業では、今年度中にベトナム・米国への現地法人設立を予定しており、本格的な動きが始まった。

 さらにフソウだけでなく、フソウグループ全体で新たな時代を見据えた経営戦略を描く。人口減少によって地域力が低下してきている中小都市のサスティナブルデザインを支援していくために、上下水道事業、住宅・設備事業、再生可能エネルギー事業のノウハウを融合させた複合提案を進めていく。ドイツのシュタットベルケも参考としながら、地域の特性に合わせた複合型ユーティリティマネジメントシステムを新たなビジネスモデルとして描き始めた。


デジタルに一番強い企業を目指す

 これらを実現すべく、積極的にデジタル分野へ経営資源を投入。角社長は「生産年齢人口が年々減少していく中で、事業領域を広げ、成長へつなげていくには時間を生み出す仕組みが必要。その仕組みがデジタル化であり、DXの実現です。タイムマネジメントなくして企業成長はありません。旧態文化のみにしがみついていけば、必ず時代から取り残される。事業の効率化や生産性の向上につなげていくためのデジタル化、競争力を高めるためのDXは必須です。フソウは上下水道事業全般を手掛ける『水の綜合企業』として、デジタル分野に一番強い企業を目指します」と力強い姿勢を見せる。

 建設業は、2024年度から罰則付きの時間外労働の上限規制が適用される。一方で、生産年齢人口の減少が進んできており、変革する社会の中で企業成長を目指すならば、業務の複合化や職域の拡大、ゼネラリストとスペシャリストの適正な配置など、時代をとらえた執行体制が求められてくる。こういった変革する時代をにらみ、社内実務面においては、時間を生み出す新たなタイムマネジメントを導くシステム開発に注力。

 事業戦略面においてはECサイト(資材ショッピングサイト)の充実、資産管理や施工・運転管理の効率化を実現するための3Dモデル化やデジタルツイン化、技術やノウハウの継承などに活用する有形・無形資産の見える化などを推進し、上下水道事業の最適化につなげていく。未来志向型の企業への脱皮に向けて経営基盤を確実に固めてきており、地域住民の生活に不可欠な水インフラサービスの持続へ、唯一の上下水道ゼネラルコンストラクターとして期待値は高い。


記者の視点

 従業員1000人を超えるフソウグループ。その中核を成すフソウは、言わずもがな上下水道事業を生業として、80年近く歴史を積み重ねてきた。

 建設が主流であった時代からメンテナンスや更新・持続といったマネジメント時代に転換してきている中、人口減少による地域衰退が徐々に進行しつつある現状に、これまでのビジネス文化から事業構造改革に注力する。歴史の積み重ねがあるだけに、旧態ビジネスにとらわれ、変革につながっていきにくいこともあろう。ただ、社会全体が急激に変化している社会動向から目をそらしていけば、時代に乗り遅れてしまう危険のほうが勝ろう。時代を見据えた事業構造改革が進められていくことを期待したい。

 その戦術の一つとしてデジタル戦略は洞察に富む。ビジネス成長へつなげていくツールである一方で、社員の働き方を発展化するツールでもあり、社内外に行き届いた非常に奥深い戦略であり、日本を代表する水企業へ歩み続けていく取組みとして注目したい。

 香川の企業から日本を代表する「水の綜合企業」へ。長期ビジョンでは上下水道事業や住宅・設備事業、再生可能エネルギー事業を融合した地域社会創造企業へ成長していく道標を示した。これまで先人から受け継いできたフソウブランドを未来志向型の色に磨き、時代変革にもぶれない柔軟かつ強固な経営基盤の構築へ、角社長のリーダーシップと社員一人ひとりの高い志のマリアージュで、これからの時代をけん引していってほしい。

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Profile

「水」処理施設を一貫して請け負う総合力

1946年の創業以来、「水と共に生きる」という企業メッセージのもと、上下水道に関する資機材の製造・販売、施設の設計・施工・メンテナンス・運転管理に取り組み、上下水道整備を通じて、地域社会の発展に貢献してきました。

「水」に関わるあらゆる事業を手掛けてきた経験と実績から、水処理施設を一貫して請け負う総合力が当社ならではの強みとなっています。

 貴重な水資源を未来につなげるために 

自然や環境に配慮した建設施工、革新的な水処理技術の研究開発、耐震性に優れた鋼管製造の加工技術などを通して、安心・安全な水利用を約束することが当社の使命です。人々の暮らしがより豊かに快適になるよう、常にあらゆる分野・角度から水を見つめ直し、限りある水資源を未来へとつなげるために努力をしています。

【事業内容】

建設部門・・・ 上下水道などの水インフラの設計、調達、施工機能を有する。その他、小水力・バイオマス発電等の再生可能エネルギー、ICT等にも取り組む。

環境部門・・・ 水インフラに使用される配管・弁・機材等を調達する商社機能を有する。資材選定、配管プラン等の提案も実施。

製造部門・・・ 異形鋼管の国内最大級の製作能力(最大口径5,000mm、最大重量30ton)工場を有する。

O&M部門・・・ 水インフラの設計、施工経験に基づいた維持・運転管理、修繕サービスを提供。

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フソウグループ紹介動画 「Answers for Community 地域の数だけアンサーがある。」