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株式会社清水合金製作所

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水道用バルブと共に75周年

水道用バルブ専用メーカーだからできた

ソフトシール仕切弁の開発

仕切弁とは?

 仕切弁という水道資材をご存じだろうか。地中に張り巡らされた水道管は常に水が満ちており、上流側からの水圧で押し流されている。管路工事などの際には水の流れを止める必要があるが、その役割を果たすのが、あらかじめ分岐部などに設置されている仕切弁となる。一時的な遮断やルート変更に備えて、全国津々浦々の管路には無数の仕切弁が取り付けられている。

 清水合金製作所の存在を抜きにして、日本の水道における仕切弁を語ることはできない。主流となっている「水道用ソフトシール仕切弁のパイオニア」であるとともに、仕切弁を含めた「水道用バルブのトップシェア」でもあるからだ。


ソフトシール仕切弁の歴史

 横浜に近代水道が創設された1887年からしばらく、制水弁(現在の仕切弁)にはイギリスやアメリカから輸入したものが使われていた。国産品は生産体制が整った1900年頃から採用され始め、徐々に外国産のバルブは姿を消していったとされている。

 当時から今に至るまで、仕切弁の基本的な構造は変わっていない。管路と一体化した「弁箱」の中に水を遮る「弁体」が入っており、弁体は上部に取り付けられた「弁棒」の操作(回転)によって上下する。下がりきった弁体は弁箱底部の「弁座」と密着し、管内の水の流れを止める。

 止水のメカニズムや塗装といった細部についても、近代水道創設からおよそ100年の間、国内の仕切弁に大きな変化はなかった。そして迎えた1980年代、それまでの常識を覆す存在として現れたのがソフトシール仕切弁である。

 旧来の仕切弁は弁箱底部に設けた溝(くぼみ)を弁座とし、そこに金属製の弁体を挿し込むような形で止水していた。しかし、この溝には水道水中のわずかな錆や砂などの異物がたまりやすい上、段差によって乱れた水の流れが管内面の付着物をこそぎ落としてしまう。これが当時、全国の水道で問題となっていた「赤水」の一因だった。

 一方でソフトシール弁の弁体は、本体こそ同じ金属製だが、それをゴムでくるむゴムライニングが施されている。ゴムの圧着により止水することで、弁箱底部の弁座は段差のないフラットな形状を実現できる。もともとは1960年代にヨーロッパで開発された技術だが、80年代に国内へと導入される際には、併せて防食性や施工性に優れた「エポキシ樹脂粉体塗料」を内面塗装に採用。その後のソフトシール弁の急速な普及は、恒常的な赤水の解決に大きく貢献したと言える。


彦根発のパイオニア

 ソフトシール仕切弁を日本に初めて持ち込んだ企業の一つが清水合金製作所である。創業は1947年で、仕切弁に用いる青銅部品の鋳造業者として、今では全国有数のバルブの生産地として知られる滋賀県彦根市に産声を上げた。創業10年目の1957年に機械工場を新設、仕切弁自体の加工を開始すると、わずか6年後の1963年にJIS工場の許可認定を取得。高いレベルの製造・生産能力を世に知らしめた。

 転機となったのは1970年代半ば、第一次オイルショック(1973年)に端を発した中近東での石油プラント建設ブームだった。日本にも工業用や汎用バルブの問い合わせが次々に舞い込む中、同社はより競争力のある技術を求めて国内外で調査を展開する。そこで「止水にゴムを使用した軽量・低コストのバルブがある」との情報をキャッチし、1980年には渡欧して現地企業の工場を訪問。数社の比較検討の結果、ソフトシール弁を開発したヨーロッパ最大の水道バルブメーカー・ボップ&ロイター社(ドイツ)と、翌1981年にライセンス契約を締結するに至った。

 さらに同年、ソフトシール仕切弁の将来性を見込み、多額の資金を投じて粉体塗装工場を建設。エポキシ樹脂粉体塗料による内面塗装はダクタイル鋳鉄管を中心に普及が進みつつあったが、バルブメーカーの中では初めて、専門企業・工場への委託によらない粉体塗装ラインを整備した。

 その後のソフトシール仕切弁の普及においても、最初期に技術導入を成し遂げた企業として、業界団体規格や日本水道協会規格の制定に多大な役割を果たしたことは言うまでもない。1995年には世界有数の総合バルブメーカー・キッツグループに参画し、水道用バルブの製造・販売を担うグループ企業として発展を続けている。


トップメーカーの所以

 そうして今日、清水合金製作所は小口径から大口径まで幅広いラインナップの水道用バルブを手掛け、その生産台数は30年以上にわたり国内トップシェアを占め続けている(日本水道協会の検査実績による)。

 また近年では、人口減少時代における山間地等での水供給に貢献するべく、小規模な集落をターゲットとした浄水処理装置「アクアシリーズ」を新たな事業として展開。さまざまな原水水質に対応する処理ユニットの拡充、災害・事故等の非常時に活躍する可搬式のラインアップなどニーズに応える製品が好評を博し、順調に業績を伸ばしている。

 一方で今般のコロナ禍においては、移動制限や展示会の中止などにより、従来の発信手法では製品情報をユーザーに届けにくくなってしまった。そこで製作したのが、各種製品をトラックに搭載した「キャンペーンカー」だ。以来、“バルブが走る!”をキャッチフレーズに、全国の事業体を訪問して“実物を見られる、触れられる”PR活動を展開。感染症対策にも万全を期し、各地で大好評を得ている。

 トップメーカーであり続けられるのは、創業当初から培ってきたコア技術とともに、かつてソフトシール仕切弁の技術導入を可能にした“ものづくりへの情熱”によるところが大きい。歴史に裏打ちされた技術力と進取の気風が、これからも日本の水道水を守る数多の製品を生み出していくことだろう。


記者の視点

 清水合金製作所は、1947年に滋賀県彦根市に清水合金鋳造所として創業して以来75年、一貫して水供給システムの安全性・衛生性・安定性への製品開発にこだわってきた水道バルブの老舗メーカーだ。今や水道バルブの主流となっているソフトシール仕切弁をドイツから輸入し、他社に先駆けて日本仕様に改良、水道バルブにおける彦根ブランドの地位向上に大きく貢献、ものづくりに対する真摯な姿勢は当時から群を抜いていた。

 平成7年にバルブ大手のキッツグループの傘下に入り、経営を刷新。「彦根生まれ・彦根育ち」の地域企業らしく、歴史・文化の異なる水道事業体の要求を理解した地域顧客重視スタイルに、生産管理から製品開発の至るまでキッツグループが有する洗練された経済性を融合。受注から納品までの各工程における遅滞・無駄を徹底的に排除するトヨタのかんばん方式を導入し多品種少量生産を実現した高度な生産ラインを確立、顧客の多様なニーズにも着実に応え、厳しい経済環境にも耐え得る強い経営体質を磨き上げてきた。

 しかしながら、挑戦への歩みは止めていない。変動する水需要に対する供給制御技術の追求はもちろんのこと、孤立しがちな小規模限界集落や災害支援のために小型浄水装置を手掛けるなど、水道界が抱える根深い課題の解決へ果敢に挑んでいる。水のあらゆるシーンで同社の名を耳にすることが多くなろう。地域企業から水企業へ発展していこうとする同社の動向に注目していきたい。

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