男性の育児休業取得率100%を達成
中塚 理子・管理部本部人事総務部課長(育児休業推進チームメンバー)
◇「こどもスマイルムーブメント」に参画
コンサルタントは、「人が財産」です。当社はこうした理念の下、社員の充実したプライベートを後押しすべく、男性の育児休業取得率の向上に取り組んできました。その結果、直近5年間で男性の育児休業取得率が50%アップし、平均期間も50日ほど増加しています。
この業界全体だと思いますが、当社は理系かつ専門技術を持つ男性社員が多いことから、まだまだ昔ながらの考え方が浸透しており、これまでは男性が育児休業を取得するという意識はほとんどなかったように思います。しかし、令和3年6月に育児・介護休業法が改正されたことを受けて、当社としても法に基づいて、育児休業の取得を推進するとともに、どうせやるなら形だけではなく、意味のある育児休業を取ってもらいたいと考えたことから、育児休業の推進チームを立ち上げました。
この中、当社は2年前から「こどもスマイルムーブメント」に参画しています。これは、幅広い主体の連携により、「チルドレンファースト」の社会を創出する東京都の取組みで、企業やNPO、大学・学校等の主体が「子どもの目線を大切にした取組み」を推進し、子どもを大切にする社会気運の広がりを目指すものです。
この背景には、令和3年に当社が創立70周年を迎えるに当たって、「健全な水と環境を次世代に引き継ぐ」というパーパスを新たに定めたことが関係しています。今の環境を次世代に引き継ぐということは、未来の子どもたちへの約束という意味が込められています。こうしたことを踏まえた上で、育児休業の取得を進めていかなければならないですし、「人が財産」の企業として、仕事と家庭の両立を支援するという方針が打ち出されることになりました。
◇オーダーメイドの育児休業
これまでほとんど実績のなかった男性の育児休業取得を進めるために、法改正で義務付けられた社員への制度の説明を形式的に行うだけではなく、各社員と面談の時間を設けて丁寧な説明を行ったり、妊娠・出産に関わる女性の身体の負担についても伝えたりすることで、配偶者へのフォローの大切さも合わせて伝えるといった取組みに努めています。
また昨年、社長の村上から男性の育児休業取得率100%を達成したのであれば、今後もずっと100%を続けていこうという話があり、これに対する誓いの意味も込めて、「男性育児休業取得率100%宣言」を出すに至りました。この宣言を通して、社内外どちらに対してもあらためて会社の決意を示した形です。
最初にお話しした通り、元々男性社員が多いこともあり、当初は管理職層の中にも「男が育休なんて…」といった考えを持った社員がいたのも事実です。否定しているわけでもなく、そもそも男性が育児休業を取るものだと思ってないというところがありました。また以前、社員に対して本音アンケートを行ったところ、「育業をしなかった/できなかった」理由については、「周囲の理解を得られないと思った」「業務調整が難しい」「そもそも人手不足で、周りに申し訳ない」といった意見が多く見られました。
こうした問題を解決するために、本人と面談した後には必ず上長に対しても、育児休業取得のための働きかけを行っています。確かに現場で人がいなくなると困るというのも重々承知していますが、その上で「そもそも育児休業は取るもの」だということを伝えています。
われわれが目指すのは、子どもが生まれてすぐ強制的に育児休業を取ってくださいということではなく、それぞれの家庭や業務の状況に合わせて、本人が希望する形で育児休業を取るサポートをすることです。繁忙期に人に仕事を引き継ぐのであれば、自分で仕事を終わらせて、気持ちよく育児休業を取りたいという気持ちもわかりますので、そういった場合には時期の調整に関する提案なども行っています。
◇社内の理解促進に向けて
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育児休業の取得には、社内での理解促進がとても大切です。このため、われわれは「NJSレター」(社内報)で育児休業に関する案内を行い、「育児休業は取るもの」「みんな取っている」ということが伝わるように工夫を凝らしているところです。また、オリジナルハンドブックを作成し、社内の掲示板に載せるなど周知に向けた活動に取り組んでいます。
このオリジナルハンドブックの中では、まだ生まれていない子どものことより、今一緒にいる奥さんのことを考えた方がピンとくるのではないかという視点から、女性の愛情曲線に関するグラフを掲載しました。女性の愛情曲線は、大変な出産直後から乳幼児期まで一緒に子育てをしないと下がっていってしまい、そこから回復するのはなかなか難しいという内容です。つまり、男性の育児休業は子どものためだけではなくて、その後の奥さんとの関係性にも影響があるということを伝えています。
合わせて、上司側の理解促進を図るため、6人同時に育児休業を取得した大阪総合事務所に「育ボス取材」として、管理職に対するインタビューを行いました。その取材の中では、管理職から「最初は少し抵抗があったが、いざ育児休業を取って戻ってきたら、部下がすごく生き生きとした顔で効率よく仕事を進めるようになった」という声もありました。こうした話を聞くと、やはりプライベートだけでなく、仕事にも良い効果が還元されてくるということが実感できたので、男性の育児休業取得を推進していくことは間違っていないとあらためて自信になりました。
また、4月から「育業サポート手当」の制度を創設しました。これは、育児休業を取得する人たちから「周りに申し訳ない」という声が多く聞かれることを踏まえ、育児休業を取得する社員がいる部署全員に対して、一律で会社が手当を出すという制度です。支給対象や金額については、いろいろと議論もあったのですが、「育児休業を取れるような組織を作ってくれてありがとう」という意味合いにすることで折り合いを付けることができました。
最近は、「育児休業を取りにくいと思いましたか」という質問に対して、「周りが取っているので取りにくさはない」「上長から育児休業を勧められた」という声も増えてきたので、少しずつではありますが、「育児休業は当たり前に取るもの」という風土ができてきているのかなと手応えも感じています。
今後は引き続き、男性の育児休業取得率100%を維持しつつ、取得日数をもう少し伸ばしていけたらと思います。現在の平均取得日数は71日ですが、実際は1年くらい取る人もいれば、数日~数週間という人もいるので、それぞれの事情を尊重した上で、皆が気兼ねなく希望の期間で育児休業を取れるようになればと思います。また、業務調整についてはまだ具体的な解決策を見出せていないので、経営層と相談しながら何かできることはないか模索していきたいと考えています。