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 〝働きやすい〟をカタチにする
  NJSの新たな挑戦

  男性育業取得率100%宣言

  入社前後のミスマッチを防ぐ採用の取組み

管理部本部人事総務部の中塚理子課長(右)と市原麻里絵氏

 コンサルタントは「人が財産」。そうした想いを着実に制度の中に組み込んでいるのがNJSの働き方改革である。

 「充実したプライベートを過ごしてもらうことが仕事での良いパフォーマンスにつながる」という信念の下、2023年には男性の育児休業取得率100%を達成。また、採用についても入社前と入社後のギャップを減らすことで、会社と社員がWinーWinの関係を築けるよう工夫を凝らしてきた。

 今回、同社管理部本部人事総務部の中塚理子課長と市原麻里絵氏に〝働きやすい〟をカタチにする同社の取組みについて話を聞いた。


男性の育児休業取得率100%を達成

中塚 理子・管理部本部人事総務部課長(育児休業推進チームメンバー)

 ◇「こどもスマイルムーブメント」に参画

 コンサルタントは、「人が財産」です。当社はこうした理念の下、社員の充実したプライベートを後押しすべく、男性の育児休業取得率の向上に取り組んできました。その結果、直近5年間で男性の育児休業取得率が50%アップし、平均期間も50日ほど増加しています。

 この業界全体だと思いますが、当社は理系かつ専門技術を持つ男性社員が多いことから、まだまだ昔ながらの考え方が浸透しており、これまでは男性が育児休業を取得するという意識はほとんどなかったように思います。しかし、令和3年6月に育児・介護休業法が改正されたことを受けて、当社としても法に基づいて、育児休業の取得を推進するとともに、どうせやるなら形だけではなく、意味のある育児休業を取ってもらいたいと考えたことから、育児休業の推進チームを立ち上げました。

 この中、当社は2年前から「こどもスマイルムーブメント」に参画しています。これは、幅広い主体の連携により、「チルドレンファースト」の社会を創出する東京都の取組みで、企業やNPO、大学・学校等の主体が「子どもの目線を大切にした取組み」を推進し、子どもを大切にする社会気運の広がりを目指すものです。

 この背景には、令和3年に当社が創立70周年を迎えるに当たって、「健全な水と環境を次世代に引き継ぐ」というパーパスを新たに定めたことが関係しています。今の環境を次世代に引き継ぐということは、未来の子どもたちへの約束という意味が込められています。こうしたことを踏まえた上で、育児休業の取得を進めていかなければならないですし、「人が財産」の企業として、仕事と家庭の両立を支援するという方針が打ち出されることになりました。

 ◇オーダーメイドの育児休業

育児休業取得実績の推移

 これまでほとんど実績のなかった男性の育児休業取得を進めるために、法改正で義務付けられた社員への制度の説明を形式的に行うだけではなく、各社員と面談の時間を設けて丁寧な説明を行ったり、妊娠・出産に関わる女性の身体の負担についても伝えたりすることで、配偶者へのフォローの大切さも合わせて伝えるといった取組みに努めています。

 また昨年、社長の村上から男性の育児休業取得率100%を達成したのであれば、今後もずっと100%を続けていこうという話があり、これに対する誓いの意味も込めて、「男性育児休業取得率100%宣言」を出すに至りました。この宣言を通して、社内外どちらに対してもあらためて会社の決意を示した形です。

 最初にお話しした通り、元々男性社員が多いこともあり、当初は管理職層の中にも「男が育休なんて…」といった考えを持った社員がいたのも事実です。否定しているわけでもなく、そもそも男性が育児休業を取るものだと思ってないというところがありました。また以前、社員に対して本音アンケートを行ったところ、「育業をしなかった/できなかった」理由については、「周囲の理解を得られないと思った」「業務調整が難しい」「そもそも人手不足で、周りに申し訳ない」といった意見が多く見られました。

 こうした問題を解決するために、本人と面談した後には必ず上長に対しても、育児休業取得のための働きかけを行っています。確かに現場で人がいなくなると困るというのも重々承知していますが、その上で「そもそも育児休業は取るもの」だということを伝えています。

 われわれが目指すのは、子どもが生まれてすぐ強制的に育児休業を取ってくださいということではなく、それぞれの家庭や業務の状況に合わせて、本人が希望する形で育児休業を取るサポートをすることです。繁忙期に人に仕事を引き継ぐのであれば、自分で仕事を終わらせて、気持ちよく育児休業を取りたいという気持ちもわかりますので、そういった場合には時期の調整に関する提案なども行っています。

 ◇社内の理解促進に向けて

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  • オリジナルハンドブック
  • オリジナルハンドブック

 育児休業の取得には、社内での理解促進がとても大切です。このため、われわれは「NJSレター」(社内報)で育児休業に関する案内を行い、「育児休業は取るもの」「みんな取っている」ということが伝わるように工夫を凝らしているところです。また、オリジナルハンドブックを作成し、社内の掲示板に載せるなど周知に向けた活動に取り組んでいます。

 このオリジナルハンドブックの中では、まだ生まれていない子どものことより、今一緒にいる奥さんのことを考えた方がピンとくるのではないかという視点から、女性の愛情曲線に関するグラフを掲載しました。女性の愛情曲線は、大変な出産直後から乳幼児期まで一緒に子育てをしないと下がっていってしまい、そこから回復するのはなかなか難しいという内容です。つまり、男性の育児休業は子どものためだけではなくて、その後の奥さんとの関係性にも影響があるということを伝えています。

 合わせて、上司側の理解促進を図るため、6人同時に育児休業を取得した大阪総合事務所に「育ボス取材」として、管理職に対するインタビューを行いました。その取材の中では、管理職から「最初は少し抵抗があったが、いざ育児休業を取って戻ってきたら、部下がすごく生き生きとした顔で効率よく仕事を進めるようになった」という声もありました。こうした話を聞くと、やはりプライベートだけでなく、仕事にも良い効果が還元されてくるということが実感できたので、男性の育児休業取得を推進していくことは間違っていないとあらためて自信になりました。

 また、4月から「育業サポート手当」の制度を創設しました。これは、育児休業を取得する人たちから「周りに申し訳ない」という声が多く聞かれることを踏まえ、育児休業を取得する社員がいる部署全員に対して、一律で会社が手当を出すという制度です。支給対象や金額については、いろいろと議論もあったのですが、「育児休業を取れるような組織を作ってくれてありがとう」という意味合いにすることで折り合いを付けることができました。

 最近は、「育児休業を取りにくいと思いましたか」という質問に対して、「周りが取っているので取りにくさはない」「上長から育児休業を勧められた」という声も増えてきたので、少しずつではありますが、「育児休業は当たり前に取るもの」という風土ができてきているのかなと手応えも感じています。

 今後は引き続き、男性の育児休業取得率100%を維持しつつ、取得日数をもう少し伸ばしていけたらと思います。現在の平均取得日数は71日ですが、実際は1年くらい取る人もいれば、数日~数週間という人もいるので、それぞれの事情を尊重した上で、皆が気兼ねなく希望の期間で育児休業を取れるようになればと思います。また、業務調整についてはまだ具体的な解決策を見出せていないので、経営層と相談しながら何かできることはないか模索していきたいと考えています。


リクルートにおけるマッチングの向上

市原 麻里絵・管理部本部人事総務部

 ◇採用活動の概要

 当社の新規採用は技術系のみ、理系の学生を対象としています。採用のスケジュールは年々変化するので、なかなかついていくのが難しいところもあるのですが、近年は4月にエントリーが開始されるので、その時点の学部3年生と修士課程1年生を対象に募集を行い、夏前頃からオンラインでの1DAYインターンシップを実施しています。

 25卒に関していうと、早期に応募してくれた学生に対しては、年明け1月頃から選考を始めています。この場合ですと、1月に説明会を行い、3月上旬には内定というスケジュールです。また、3月以降にエントリーしてくれた学生に対しても同じように選考を行い、こちらは4月中旬に内定というスケジュールで進めています。

 1DAYインターンシップは、水道・下水道の二つのコースを用意しています。オンラインですが、実際の業務をイメージできるようなグループワークを通して、コンサルタントという職種や、当社への理解を深めてもらうことを目的としています。選考の中で、実際の仕事内容に触れる機会はなかなかありませんので、まずはそれを知ってもらわなければならないと思っています。その上で、あわよくば社風にも触れてもらえるように、先輩社員とのパネルディスカッションも行っています。

 また並行して、学生の希望に合わせた2週間~1カ月ほどの長期インターンシップも実施しています。こちらは実際の部署に配属して、雇用形態としてはアルバイトのような形で、各案件に対する業務の補助をしてもらうというものです。

 当社の採用においては、学生時代に何か一つでもしっかり打ち込んできた経験があるか、その中で自ら考えて行動した経験があるか、そこに他者を巻き込むことができているかという点に注目しています。合わせて、コミュニケーション能力も重視していますが、コンサルタントを志望されているからなのか、当社の選考に来られる方はコミュニケーションが上手な方が多いなという印象を持っています。

 ◇包み隠さず伝える

 採用においてとにかく避けたいのは、双方にとってのミスマッチです。学生に対しては、入社前と入社後のギャップを減らすために、いいところも悪いところも言えることは全て言うようにしています。近年は、転勤や残業がネックになって内定を辞退される方も多いので、残業の状況や転勤の制度については実際の数字を包み隠さず話すようにしています。

 採用の過程では、先輩社員に登場してもらう機会も多いので、彼らに対してもマイナス面は隠さず話してくださいと伝えています。業務量については、会社としてもちろん改善していこうという別軸での動きはあるのですが、現状ではまだ残業がやむを得ない時期もありますので、こうした点についてもしっかり説明をしています。

 また、環境や海外に関わる業務を志望する方も多いのですが、あまりにも実際の業務との乖離が見られる学生に対しては、二次面接の後に行う個別面談の場で、「当社としてはこの点のギャップに懸念を抱いているのですが、大丈夫ですか?」ということも正直に伝えています。そういった背景もあってか、25卒の学生に入社の決め手について聞くと、「いいことも悪いこともはっきり教えてくれるので、誠実性を感じた」と言ってくれた方もいたので、双方にとってプラスの効果が出ているのかなと感じています。

 ◇全社を挙げて人材確保へ

 応募者数を増やすための取組みとしては、研究室訪問に力を入れています。24卒に関しては、昨年の夏に入社1、2年目の社員の出身研究室ほぼ全てを訪問しました。北海道から九州まで大体50~60くらいはあったかと思いますが、1件1件足を運び、そこで説明会を行うことで一人でも多くの学生に当社を知ってもらう機会を作れたかと思います。まだ集計は出せていませんが、研究室訪問で当社を知ったという学生も一定数いましたので、こちらについても効果が出ているのではないかと考えています。

 研究室訪問については、まだまだ手探りですが、あまり硬くなりすぎないように、そして何よりギャップが生まれないように心がけています。その中で、具体的な仕事内容をこと細かに話すというよりは、自然災害やインフラの老朽化などの諸課題に対して、「なぜこの仕事が必要とされているのか」「コンサルタントの意義は何なのか」というような方向性で説明をしています。先輩社員からは、現在の仕事内容についてスライドにまとめた上で、15分ほど使って話しをしてもらっています。この仕事紹介については基本的に1年目の社員が行うので、学生の目線から見ても、「入社したらまずはこういう仕事をするんだ」という具体的なイメージが湧きやすいのではないかなと思っています。

 一方で、これは当社だけではないと思いますが、近年は機械や電気系の学生の採用に苦労しているところです。特に電気系の学生は母数も少ないので、なかなか採用につなげられておらず、これが一つ大きな課題であると捉えています。中途入社の社員の出身研究室にもアプローチしていますが、これらの職種を専攻されている学生は特に需要が高いので、現状はまだまだ苦戦しています。ですが、1人でも入ってくれれば、その後輩や知り合いが興味を持ってくれるケースもあるので、一歩ずつ地道に頑張っているというところです。

 私は中途入社なのですが、当社の社員は皆、採用活動にとても協力的だなという印象を持っています。採用に関するお願いをして、忙しいからと断られたこともありませんし、すぐに日程調整や準備をしてくれます。やはり私から仕事内容を話すよりも、技術職の先輩社員から話してもらった方が生の声を伝えることができ、ミスマッチを防いだり、より多くの学生に当社を知ってもらえるため、とても感謝しています。今後も引き続き社内の協力を得ながら、学生・会社双方にとって良い選択となるような採用活動を進めていければと思います。


記者の視点

 今回のインタビューで印象的だったのは、中塚課長、市原氏の両者が包み隠さず社内の状況や課題について話してくれたことだ。

 中塚氏は、男性育業取得率100%を達成した現在でも社内における理解促進が難しいことや、業務調整がまだまだうまくいっていないことを正直に教えてくれた。その上で「やって良かった」「やってきたことは間違いではなかった」と話す姿からは、働きやすい会社の実現に向けた同社の決意の一端を感じ取ることができた。

 一方、採用を担当する市原氏は、採用の過程で話せることは何でも正直に話すと言い切る。例えばこんなことも?といくつか難しいだろうと思う質問をしても、全ての問いに対して「はい」と即答。そうした両者からは、「法律で決められているから」「経営層や上司に言われているから」といった受動的な姿勢は全く感じられなかった。会社を支えるバックオフィスという立場だからこそ、本当に縁の下の力持ちとして良い会社を作ろうとしているのだ。

 時代に合わせて、会社のあるべき姿は変わっていく。そうした変化の中にあっても、これからも同社は〝働きやすい〟を追求していくだろう。「水コン」の最先端を進み続ける同社の挑戦の軌跡を今後も見守っていきたい。

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Profile

 NJSは、戦後の復興期にわが国最初の上下水道コンサルタントとして設立されました。以来、時代のニーズに対応した水と環境に関するトータルソリューションの提供を目指し事業を拡大してまいりました。

 国内では全ての都道府県に事業所を置き、地域の事情に適合した提案を行っています。海外では業務実施国は90カ国を超え、世界の水問題解決に取り組んでいます。

 また、世界初となる小口径管路の点検調査ドローンの開発、国内初の管路施設を対象としたコンセッション事業など、常に新しい事業の開拓にチャレンジし続けています。

 

 創立   1951年9月
 代表者     代表取締役社長 村上 雅亮
 従業員数 グループ社員数約900名
 業務実績 ①コンサルティング
      浄水場約200カ所、下水処理場約600カ所の設計実績、海外業務実績90カ国以上
      ②ソフトウェア
      クラウドシステム「SkyScraper」のユーザ都市約260都市
      ③インスペクション
      世界初の小口径管路点検調査ドローン「AirSlider」の開発
      ④オペレーション
      オペレーションサービス実績約100都市

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