被災地での活用事例
分散型システムにはさまざまな形態があるが、共通しているのは、小規模な河川や雨水など、水源さえ確保できれば、小型の浄水処理装置によって生活に必要な水を確保できる点にある。キッツエスジーエスが手掛けるアクアレスキューも、浄水場原水、防火水槽、井戸、プール、自然水など、さまざまな水源から水道水質基準を満たす水をつくることができる小型浄水装置である。
能登半島地震の現場でも、その性能は十分に発揮された。断水が発生した珠洲市と輪島市で、アクアレスキューは水の確保に貢献した。
珠洲市では、アクアレスキュー2台とオプションの活性炭ユニットが健康増進センターに設置された。近くを流れる若山川の水を処理し、自衛隊が設置した避難所の風呂やトイレで使用された。また輪島市では、児童館に1台を設置し、側溝に流れ込む湧水を原水として活用した。浄水処理後の水は、水道水質基準である濁度2度以下、色度5度以下をクリアし、トイレや風呂、洗濯などに使用されていた。
この支援は、キッツエスジーエスの親会社であるキッツと、IT業界の経営者・投資家個人を中心とした災害支援の人的ネットワーク「災害時緊急支援プラットフォーム(PEAD)」との協定に基づくものだ。
水源となった水路
水中ポンプで原水を取水
設置場所道路端
- 水源となった水路
- 水中ポンプで原水を取水
- 設置場所道路端
さらに珠洲市清水地区でも、アクアレスキューは地域住民にとって命の水を届ける存在となった。同地区ではもともと、山の上にある簡易水道から水の供給を受けていたが、地震により簡易水道施設が被災し断水状態に陥った。断水が長期化する中、慣れない避難生活は住民の大きなストレスとなり、水がない状況でも自宅で生活を続ける人も現れていた。
こうした状況に手を差し伸べたのがキッツエスジーエスである。前述の支援活動を進める中で清水地区の厳しい状況を知り、いち早く現地に駆け付けて水の供給を行った。
清水地区の現場には、山側から水路を通じてわずかな水が流れているだけで、まさに手探りの状態からの取り組みだった。原水をアクアレスキューへ送るため水路内に水中ポンプを設置し、装置を据え付けるための骨組みも一から組み立てるなど、試行錯誤しながら設置が進められた。懸命な作業の結果、GW明けには水の供給が可能な状態を実現した。水質も、水道水の品質を定める51項目全てをクリアしており、アクアレスキューは清水地区にとってまさに救世主となった。
「生活が劇的に変わりました」――。そう語るのは清水地区に住む濵幸治さんだ。
それまでは自宅の井戸水を生活用水に使い、飲み水は給水拠点まで車で取りに行く生活を送っていたが、アクアレスキューの稼働によって一気に日常に近い暮らしが戻った。地域には高齢者も多く、濵さんが代わりに水を汲みに行くことも多かったという。アクアレスキューの稼働により、こうした生活は一変し、水が地域にあることのありがたさを改めて実感したという。
装置の管理についても、キッツエスジーエスの社員から説明を受けた上で対応していたが、稼働後に大きなトラブルはなかった。その後、市の水道が復旧したことに合わせ、アクアレスキューは役割を終えた。