日本水道新聞社 電子版ポータルサイト

日本水道新聞社 × 日本水道新聞社
×
株式会社 キッツエスジーエス

News

Gallery

表示可能な画像がありません。

Contact

被災地での水の確保に貢献

可搬式膜ろ過浄水装置

「アクアレスキュー」の活用と展開

 2024年に発生した能登半島地震をきっかけに、集落単位、あるいは戸別単位で飲料水などを確保する、いわゆる分散型システムへの関心が高まっている。

 国土交通省の上下水道政策の基本的なあり方検討会においても、分散型システムについて、大規模な浄水場から広域の配管網で水を供給する集約型システムとの最適な組み合わせを今後検討していく必要性が示されるなど、新たな政策の流れとなりつつある。既に民間事業者では、分散型システムを実現するコンパクトな浄水処理製品が数多く市場に投入されており、能登半島地震の復旧・復興の現場でも活用されている。

 バルブの製造・販売を主要業務とするキッツエスジーエスにおいても、同社が手掛ける可搬式膜ろ過浄水装置「アクアレスキュー」が被災地での水の確保に貢献した。今回、能登半島地震におけるアクアレスキューの活用事例を軸に、同社が目指す今後の展開を探る。


なぜ今、分散型が注目されるのか

 アクアレスキューの活用事例を紹介する前に、なぜ今、分散型システムが注目されているのかを整理しておきたい。

水道施設の老朽化の状況(国土交通省HPより)

 日本の水道インフラは高度経済成長期を中心に急速に整備が進み、現在では水道普及率が98%を超える水準にまで達している。全国に水道が行きわたった一方で、これまでに布設された水道管の総延長約74万kmのうち、4分の1を超えるものが標準耐用年数である40年を経過しており、老朽化の進行は全国共通の課題となっている。

 こうした老朽管路は、平常時の漏水リスクや、災害時における大規模断水のリスクを抱えている。実際、昨年には京都市内で老朽化したCIP管からの漏水により大規模な断水が発生しており、水道インフラの老朽化は社会問題として顕在化している。

 一方で、膨大な量の管路を更新するには多額の投資が必要となる。人口減少・少子高齢化が進む中、特に過疎地域では利用者数に対して維持更新コストが高くなる傾向があり、従来の水道モデルのままでは持続可能性が損なわれる恐れもある。また、現行の大規模浄水場から広域配管網で供給する集中型システムは、管路をネットワーク状に張り巡らせているため、「急所」となる箇所でトラブルが発生すれば、大規模断水に直結しかねない。実際、能登半島地震では水道システムの要となる施設が地震で被災したことで、広域断水が長期化した。

 さらに国土交通省の有識者委員会で示された資料でも、人口減少が上下水道事業に与える影響の大きさが指摘されている。日本の2050年の総人口は、人口がピークとなった2008年と比べて約20%減少する見込みであり、市区町村ごとの人口推移を見ても、一部の都市を除き、ほとんどの市区町村で2050年には人口が減少すると予測されている。加えて、2020年と比較して約2割の市町村で人口が半数未満になると見込まれており、特に人口規模の小さい中山間地域で人口減少率が顕著となっている。

 こうした人口減少、少子高齢化、過疎化の進行は、水道事業の経営に大きな影響を与える。能登半島地震は、その現実を改めて認識させる出来事となった。大規模な被害は半島部に位置するいわゆる能登6市町に集中し、特に珠洲市、輪島市での被害は甚大だった。復旧・復興に向けて多くの支援が寄せられた一方で、地震後に発生した豪雨の影響もあり、現在も水道の復旧が困難な集落が残っている。こうした集落では、国の技術開発プロジェクトのもと、分散型システムによる水供給の実証が進められている。

 今後、人口減少がさらに進む中で、既存の水道システムの維持が難しい地域は今後も増えていくと考えられる。こうした状況では、従来の一極集中型モデルとは異なり、地域ごとに分散化した水インフラの配置を検討していく必要がある。


被災地での活用事例

 分散型システムにはさまざまな形態があるが、共通しているのは、小規模な河川や雨水など、水源さえ確保できれば、小型の浄水処理装置によって生活に必要な水を確保できる点にある。キッツエスジーエスが手掛けるアクアレスキューも、浄水場原水、防火水槽、井戸、プール、自然水など、さまざまな水源から水道水質基準を満たす水をつくることができる小型浄水装置である。

 能登半島地震の現場でも、その性能は十分に発揮された。断水が発生した珠洲市と輪島市で、アクアレスキューは水の確保に貢献した。

 珠洲市では、アクアレスキュー2台とオプションの活性炭ユニットが健康増進センターに設置された。近くを流れる若山川の水を処理し、自衛隊が設置した避難所の風呂やトイレで使用された。また輪島市では、児童館に1台を設置し、側溝に流れ込む湧水を原水として活用した。浄水処理後の水は、水道水質基準である濁度2度以下、色度5度以下をクリアし、トイレや風呂、洗濯などに使用されていた。

 この支援は、キッツエスジーエスの親会社であるキッツと、IT業界の経営者・投資家個人を中心とした災害支援の人的ネットワーク「災害時緊急支援プラットフォーム(PEAD)」との協定に基づくものだ。

  • 画像
  • 画像
  • 画像
  • 水源となった水路
  • 水中ポンプで原水を取水
  • 設置場所道路端

 さらに珠洲市清水地区でも、アクアレスキューは地域住民にとって命の水を届ける存在となった。同地区ではもともと、山の上にある簡易水道から水の供給を受けていたが、地震により簡易水道施設が被災し断水状態に陥った。断水が長期化する中、慣れない避難生活は住民の大きなストレスとなり、水がない状況でも自宅で生活を続ける人も現れていた。

 こうした状況に手を差し伸べたのがキッツエスジーエスである。前述の支援活動を進める中で清水地区の厳しい状況を知り、いち早く現地に駆け付けて水の供給を行った。

 清水地区の現場には、山側から水路を通じてわずかな水が流れているだけで、まさに手探りの状態からの取り組みだった。原水をアクアレスキューへ送るため水路内に水中ポンプを設置し、装置を据え付けるための骨組みも一から組み立てるなど、試行錯誤しながら設置が進められた。懸命な作業の結果、GW明けには水の供給が可能な状態を実現した。水質も、水道水の品質を定める51項目全てをクリアしており、アクアレスキューは清水地区にとってまさに救世主となった。

アクアレスキューが地域に水を届け続けた

 「生活が劇的に変わりました」――。そう語るのは清水地区に住む濵幸治さんだ。

 それまでは自宅の井戸水を生活用水に使い、飲み水は給水拠点まで車で取りに行く生活を送っていたが、アクアレスキューの稼働によって一気に日常に近い暮らしが戻った。地域には高齢者も多く、濵さんが代わりに水を汲みに行くことも多かったという。アクアレスキューの稼働により、こうした生活は一変し、水が地域にあることのありがたさを改めて実感したという。

 装置の管理についても、キッツエスジーエスの社員から説明を受けた上で対応していたが、稼働後に大きなトラブルはなかった。その後、市の水道が復旧したことに合わせ、アクアレスキューは役割を終えた。


地域に寄り添った対応で新たな展開を

 キッツエスジーエスでは、昨年立ち上げた新設部署であるエンジニアリング事業部を中心に、アクアレスキューをはじめとする小型浄水装置製品群「アクアシリーズ」の新たな事業展開を進めている。同事業部では、ニーズの掘り起こしから製品の納入、その後のメンテナンスまでを一貫して担い、今回の能登半島地震のように地域に寄り添った対応を行っている。

エンジニアリング事業部プロジェクト課係長・山口哲也さん

 現在では、アクアレスキューといえば小型浄水処理装置として認知が広がっているが、市場投入当初は実績づくりに苦労したという。今回の能登半島地震での対応を主導したエンジニアリング事業部プロジェクト課係長の山口哲也さんは、当初からアクアレスキューの製造・販売に携わってきた。バルブが主力製品である同社において、キャリアのほとんどをアクアシリーズとともに歩んできた人物だ。

 「市場投入当初は認知度が低く、水道事業体への営業には苦労しました。初年度はほとんど実績を上げられず、それでも何とかこの製品を水道の現場に届けたいという思いで取り組んできました」と振り返る。

 現在では、能登半島地震での設置に加え、既存の浄水処理施設の更新に合わせた導入など、徐々に案件が積み重なってきている。アクアシリーズの強みは、人口減少により処理水量を減らさざるを得ないケースに応じて、ダウンサイジングした装置を設計・搬入できる点にある。また、地域のニーズに合わせたオーダーメイド対応が可能で、複数台の設置による柔軟な運用ができる点も特長だ。日処理量50t規模の小型装置の認知度は高まりつつあり、今後は一定規模の浄水場などへの納入も目指す。

 国の政策方針が追い風となる中、地域のニーズを丁寧に拾い上げながら、アクアシリーズのさらなる普及に力を入れていく。


記者の視点

 日本の総人口は14年連続で減少している。この流れに歯止めがかかる兆しはなく、本格的な「減る時代」に突入した。一方で、これまで整備されてきた社会システムやインフラは、人口が増えることを前提に設計されてきた。水道を例にとると、料金制度の逓増制は水需要がひっ迫する中で大口需要者の使用抑制を図る仕組みであり、施設整備も人口増加を前提とした能力で設計されている。

 こうした社会システムやインフラを一気に人口減少対応型へと転換することは容易ではないが、減る時代に合わせた大規模な「撤退戦」は避けて通れない課題でもある。

 一方で、水道はナショナルミニマムであり、人々の生活の根幹を支える存在だ。「人が減るから、この地域では水道をやめる」という単純な判断が許されるものではない。その中で、国が進める分散型システムを活用したベストミックスは、老朽化、人口減少、災害リスクといった日本の水道事業が直面する複数の課題に対する現実的な適応策として注目される。従来型の広域集中モデルと組み合わせることで、地域ごとに柔軟で効率的な水供給体制を構築できる可能性もある。

 現在はキッツエスジーエスをはじめとする民間企業の取組みが先行しているが、今後これを水供給の一つの形として定着させていくためには、国による技術の標準化や制度設計といった政策面での支援が不可欠となる。

株式会社 キッツエスジーエスの密着記事一覧

Profile

 株式会社キッツエスジーエスは昭和22年滋賀県彦根市で創業しました。バルブ部材の鋳造からスタート。その後日本水道協会指定検査工場の許可認定を取得し水道用バルブ製品群の生産を始めました。現在は、水道用仕切弁の主流となっているソフトシール仕切弁をはじめ、膜ろ過技術を用いた水処理装置、アクアシリーズを発売中です。水道用バルブから水処理装置製品までをラインナップし、水道用製品の専用メーカーとして75年を迎えました。


【キッツエスジーエスは水で社会に貢献する】

 

持続的な社会に対する貢献

 短期的な企業価値の向上ではなく、長期に認められる企業となるには社会に対する持続的な貢献が不可欠であると考えています。商品を通した貢献だけでなく、企業と人のが自ら規範となる行動をすることで持続的に社会から認められる存在になり得ると考えています。

企業価値の向上

 創造的であり質の高い商品を提供することで、初めて社会から認められ選ばれる企業になることが出来ると考えています。社会から認められ選ばれ続けることが企業価値の向上に必ず繋がります。

創造的、質の高い製品の提供

 社会に対して価値のあるものを提供することが企業の使命であると考え創造的であり品質の高い商品を作り出し送り出していく。斬新で長期に使える商品は、安心・安全な社会基盤作りに貢献します。

生き生きとした組織・人・風土

 企業の基本は人。人がいて組織が形成されそこに風土が作られていく。企業の活性化=人の活性化であると認識し、社員がいかに生き生きと仕事ができるかを考え、環境を整え、行動して行かなければならないと考えています。

 

 私たちキッツエスジーエスは、〝いつでも笑顔で美味しい水が飲める社会であってほしい”と水への想いを品質に込めて、これからも日本の水が世界に誇れる美しい水であるために、水のあらゆるシーンで貢献できるサステナビリティ経営企業を目指していきます。

Information

耐キャビバタ(キャビテーション抑制形 バタフライ弁)

アジャストバタ2(面間調整形 バタフライ弁)

耐震補修弁

可とう式ポリパイソフト(ポリエチレン管用ソフトシール仕切弁 可とう式継手形)

マルチガスケット(GF・RF兼用フランジ接合部材)

町野式口金内蔵ラクエア(簡易分解式急速空気弁)